中土トンネル(手前)から信号機を挟んで隣接する平倉トンネルを望む。天井の照明は多くが消され、外との明暗差が大きい=9月27日午後、小谷村

事故続発「怖いトンネル」なぜ 小谷の国道トンネル 

2019年10月15日掲載

「小谷村の国道トンネルが怖い」

 本紙記者に、不安がる住民の声が届いた。指摘があったのは、新潟県と大北地方を結ぶ幹線道路の国道148号・中土(なかつち)トンネル(北安曇郡小谷村)。警察に取材すると8、9月にはトンネル内で計5件の事故が起き、死者も出ていた。全長1228メートルのトンネルに何があるのだろう。「怖いトンネル」の正体を探ろうと現場に向かった。

   (岡田理一)

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<天井の照明点灯は30~100メートルおき 中の暗さに目が慣れず>

 1992年開通の中土トンネルは、JR大糸線中土駅近くの山中を貫く。片側1車線で車道の幅は6・5メートルある。

 9月末の平日午後3時ごろ、トンネルを訪れた。大型トラックや乗用車が頻繁に行き交い、50キロの制限速度を超えているように見える。

 トンネル内の歩道に入り、気付いたのは「暗さ」だ。足元が見えにくいほど暗い。入り口付近の天井には多数の照明が付いていたが、点灯しているのは30~100メートルおきに1基ほど。大半が消えていた。車で新潟県側からトンネルに入ってみると、20代の記者でも目が慣れず、進入前に減速するなど「注意しないと危ないな」と感じた。

 「車にお年寄りを乗せてトンネルを通ると、『怖い』と言われるんです」。記者にこう語った村内の50代女性は介護職。知り合いの高齢男性からは「トンネルに入って急に暗くなり、思わず車を止めてしまった」と聞いた。男性は白内障を患っていたが、もちろん免許は持っていた。また、この女性自身もトンネル入り口で前方の車がいきなり停止してしまい、ひやりとした経験があるという。

 大町署によると、中土トンネル内では8月30日正午前、対向車線をはみ出した軽トラックと乗用車が正面衝突し、軽トラックの男性=当時(76)=が死亡した。9月11日午後3時ごろには、別の物損事故の通行規制中に乗用車と中型トラックが衝突し、1人が軽傷。このほか8月28日には単独と追突の物損事故2件が起きている。

 人身事故2件が起きた日は共に雨天だった。雨の影響やスピードの問題なども考えられ、事故原因は特定されていない。ただ、事故が続き「危ない」「暗い」と感じる人がいることは事実だ。

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<節約で間引き「最低限は確保」でも 明るさの確認目視のみ>

 なぜ照明が間引かれているのか。国道148号を管理する県大町建設事務所は「電気代の節約」と説明。年1回、目視で設備を点検し「運転する上で最低限の明るさは確保している」とする。だが、機器を使った明るさの測定などはしていない。

 県建設部によると、トンネル内の照明は道路構造令の設置基準に沿って整備され、明るさ(路面輝度)も設計速度などに応じ細かく定められている。特に出入り口付近は目が慣れやすいよう、中央部より明るく設定されている。

 ところが、完成したトンネルを維持・管理する上では、設置時の基準に準じることが「望ましい」とあるだけ。管理者が「安全」と判断すれば、照明を間引いても「問題はない」(県道路管理課)。中土だけでなく、多くのトンネルで照明が消されている理由だ。

 県は国道148号で現在の水銀灯から、より明るく電気代が安い発光ダイオード(LED)への切り替えを順次、進めている。だが予算に限りがあり、中土トンネルの切り替えがいつになるかは決まっていない。

 事故との因果関係が明確でないとしても、トンネル内の明るさを客観的に測定したり、LEDへの切り替え順位を再検討したりすることは可能だ。「どんな対応ができるか検討している」と建設事務所。「怖いトンネル」と感じる住民がいることを、重く受け止めてほしい。

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