県内中学で横行「闇部活」って何?疲れても「休めない」

2019年12月16日掲載

中学校での運動部の活動を巡り、練習時間の制限や週2日の休養日を定めた県教委の指針が骨抜きになっているとの指摘が、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。複数の保護者からは「社会体育の名目で『闇部活』が常態化している」との声が。一方で容認派の親や指導者からは「練習して勝つことでしか得られないものがある」との主張も聞こえてくるが...。(島田周)

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 「とにかく長過ぎるんです」。北信地方の中学校バドミントン部に息子が所属する40代の女性を訪ねた。「健康や体力づくりのために」と運動部に入ったが、平日の練習が午後9時ごろまで続く日もある。女性は「家族で過ごす時間もない」と困惑する。

 部活を休めないのだろうか。「息子は疲れた顔で帰ってきても『仲間との関係を壊したくないから休みづらい』と言うんです」。取材も匿名が条件だった。

 県教委は今年2月、中学生の運動部活に関する指針を改定。長時間化や過度な練習によるけがを防ぐため、1日当たりの時間を長くとも平日2時間、土日などは3時間程度とした。週2日以上の休養日を設け、土日のどちらかは休みとすることも定める。だが、この女性は「全然守られていない」と言い切る。

 「抜け穴」の一つが「社会体育活動」。学校の部活を終えた生徒たちは、自ら地域のスポーツ施設に移り、「○○クラブ」といった団体で練習を続ける。外部指導者もいるが、部活顧問がそのまま指導することが少なくない。

 長野市内の中学校のバスケットボール部も、部活を終えると別の体育館で社会体育として顧問が指導。ある月の土日は練習試合や大会で埋まり「代休」はない。テスト前でも大会を理由に練習時間が延長される日がある。

 息子がこのバスケ部に所属する40代女性によると、社会体育のスポーツ保険料を支払ったところ、学校名の領収証が戻ってきた。学校の部活と社会体育が混在した「予定表」が校長名で出されるなど「境目が分からない」と首をかしげる。

 一方、県内の中学でバドミントン部顧問を務めた経験がある50代教員は、地域の大会で1、2回戦止まりだった生徒が土日も練習に力を注いだ結果、上位入賞を果たし「自信を持てた」と強調。「勝つ喜びを味わわせるための練習時間は必要だ」と話す。熱心な練習を歓迎する親は発言力が強く、先の長野市の女性は「疑問を口に出しにくい雰囲気がある」と言う。

 こうした中、飯田市教委は「事実上、部活と社会体育が一体化している」とし、2020年9月からこうした社会体育を完全廃止すると決めた。県教委も「指針に従ってもらうよう、顧問対象の研修会を開くなどしている」(スポーツ課)とする。

 「勝つことでしかスポーツの価値を教えられないとすれば、そこが問題。大人の側が部活動を変える意識を持つ必要がある」。部活動の実態に詳しい早稲田大の中澤篤史准教授(スポーツ社会学)はこう話している。

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 [県教育委員会の中学校部活動指針]

 正式名称は「中学生期のスポーツ活動指針」。活動時間や休養日などの基準を示している。土日曜日に行われる大会に参加した場合は他の土日に振り替え休日を取る、長期休暇は半分以上を休日とする、「朝練」は行わないといったルールを挙げる。部活動の延長として行う社会体育活動は原則禁止。県教委は市町村教委にも独自の指針を作るよう求めている。

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