「南箕輪町三本木」と書かれていた標識=4日

県道に「存在しない町」の標識...なぜ?

2019年12月21日掲載

「ずっと気になってます」。伊那市と南箕輪村にまたがる中央道伊那インター近くの県道の標識写真が、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に送信されてきた。一見すると、何の変哲もない道路標識だ。県道の番号を記した青い六角形の下に「南箕輪町三本木」...。南箕輪町?存在しない町の標識がなぜ―。取材すると、意外な事情が見えてきた。(春日基弘)

      ◇

 標識が立つのは伊那インターから東西に走る県道伊那インター西箕輪線沿い。近くのスーパー店長松沢藤保さん(48)は「通勤で通るけれど知らなかった。なぜ町なんでしょうか」と首をひねる。

 標識を管理する県伊那建設事務所(伊那市)を訪ね、写真を見せた。維持管理課の担当者は「えっ」と驚き顔。調べてもらうと約2時間後、予想外の答えが返ってきた。「もともとは『南箕輪村』と正しかったようです」

 同事務所によると、この路線の開通は1994年。標識もその頃に設置されたとみられる。確かに、台帳となる「道路標識調書」には設置当時の標識の写真があり、ちゃんと「南箕輪村」になっている。謎が深まってしまった。

 なぜ「町」にすり替わったのか。同事務所の見解はこうだ。交通事故などで標識を壊した場合、県は原則、当事者が業者を手配するなどして修復するよう求める。問題の標識も倒されるなどし、直す際に表記を間違え、そのままになったのではないか―。

 南箕輪村は人口1万5千人を超え、県内の多くの町を上回る規模だ。近隣には箕輪町もあり、混同したのかも。ただ、事故や修理の記録は残っておらず、確定的なことは言えないとのことだった。

 むろん、事故の当事者が修復したとしても、最後は県職員が現場を確認するはず。「確認がしっかりしていなかったのかもしれない。申し訳ない」と同事務所の岩下康之・維持管理課長。

 残しておけば「幻の町」として話題になるかも―。一瞬そんな考えも頭をよぎったが、正しい標識は交通安全の土台でもある。同事務所は取材後、応急対応として南箕輪町の「町」の部分に「村」のシールを貼った。

シールが貼られて「南箕輪村」に=18日

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