フィルムで包装された豚肉などが並ぶ店舗=安曇野市

店にトレーをポイ、なぜ?マナーは、衛生面は

2020年04月 6日掲載

 購入した肉や魚をポリ袋に移して持ち帰り、トレーはレジ近くのごみ箱へポイ―。「衛生上、どうなんでしょうか」。塩尻市の40代女性から本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に疑問が寄せられた。「コエチカ」のLINEには、「私も見た」と複数の目撃証言が。迷惑行為として注意を促しているスーパーもあった。食品トレーを巡る事情を取材した。(百瀬明日香)

 女性によると、自宅近くのスーパーで目撃することがある。「ごみを減らしてごみ袋代を浮かせるためなのか、洗ったり捨てたりするのが面倒なのか...」。ポイ捨ての理由をそう想像する。

 本当にそんなことがあるのだろうか。長野市のスーパーに向かい、店内のごみ箱をのぞき込むと、早速トレーや包み紙などを発見。洗わず捨てたらしく、男性店員は「生臭くて困る」。市内の別のスーパーで働く女性店員も「夏場には食中毒でも起こすのではないかと心配」と言う。

 県食品・生活衛生課は「トレーから移す際に店内に肉や魚の汁がたれ、食中毒の原因菌などが広がる恐れもある」と指摘する。

 あるスーパーはレジ隣のテーブルに「衛生上の理由で生鮮食品の開封はご遠慮ください」との注意書きを貼った。ただ、お客だけに強くとがめることはしづらいようだ。

 実は女性も肉のトレーを捨てていた時期がある。トレーのままだと冷凍しずらいと感じていたからだ。「どうしてわざわざ購入後に手間がかかる包装をするのか...」。しかし、自宅で洗って再生利用に回すほうが環境に良いと気付き、持ち帰るようになった。

   ◇   ◇   ◇

 そもそも生ものはなぜトレーに入れて販売するのか。複数のスーパーに尋ねると「衛生的」「鮮度の維持」といった声や「見栄えがいい」「陳列しやすい」といった利点が上がった。

 一方、ごみ減量の観点から、「脱トレー」の動きもある。

 コープながの(長野市)は長野市と安曇野市の全2店舗で、鶏肉と豚肉の一部をフィルムで包装して販売。同市の安曇野豊科店では平日に45袋、休日は90袋ほど売れる。ただ、魚などは汁が出てくるなどの理由でフィルム包装には向かず、全商品でのトレー切り替えは難しいという。

 情報を寄せた女性は、トレーのポイ捨てに違和感を覚える一方、現在の食品包装が過剰とも感じており、見直しの動きが広がることを期待している。

     ◇

<ごみ箱の中身は? 魚の汁付着のトレーや紙箱など>

 県内のスーパーの協力を得て、衛生面に気を付けながら、レジ隣のテーブル下にあるごみ袋の中身を調べてみた。

 サンマやアサリの汁が付いたままのトレー。汁が出ていて魚っぽいにおいがする。レトルトの中華丼の紙箱をはじめ、納豆パックをまとめるビニール、缶ビールの紙包装もあった。新聞や求人雑誌、まだ食べられそうに見えるリンゴも出てきた。

 店員によると、ごみを捨てる行為は、人目が少ない時間帯に集中。開店後から午前10時ごろまでと、昼すぎから夕方前までが多い。別のスーパーでは人目を気にして、レジから遠いごみ箱に捨てられる傾向があるという。

 真意を尋ねようとスーパーに何回か足を運んでみたが、実際に捨てる人を目にすることはなかった。捨てることに後ろめたさを感じ、人目を気にしているのだろうか。

     ◇

<各地でも同様の行為が>

 スーパーの買い物客がトレーなどを店内のごみ箱に捨てる行為は、各地でも見られるようだ。

 コエチカのパートナー紙、西日本新聞「あなたの特命取材班」によると、福岡市の40代女性会社員は、レジの近くで60代くらいの女性がトレーの包装をはがし、くるりとひっくり返して中の肉を包装で包み、トレーをポイっとごみ箱に捨てて歩き去ったのを見た。

 福岡県内では「エリアによっては頻繁にあり、困っているんです」と話すスーパーチェーンも。特に肉の特売日はごみ箱から目を離すとすぐにトレーで満杯になる。

 洗ったトレーを回収するリサイクル箱に入っていることもあり、店側は「ごみの分別が厳しい地域なので、持ち帰りたくないのかもしれません」と分析している。

 トレーのほとんどはプラスチック製品。近年、プラごみによる海洋汚染が国際問題となり、削減する企業が増えている。トレー削減とマナー向上に向けて、売り手と消費者、双方の意識が問われそうだ。(西日本新聞・山田育代)

とは

私たちが日々の暮らしの中で出合う、さまざまな疑問や困りごと、「おかしいな」「納得できない」「なぜだろう」と思うできごと。記者に伝えることで、ヒントや答えが得られるかもしれません。
「声のチカラ」(コエチカ)は、あなたが寄せてくれた情報を出発点に記者が取材し、記事にする新たな仕組みです。一人一人の声と記者がつながることで、地域や社会を変える力が生まれます。

⇒詳しくは、特設ページをご覧ください