県内医療現場、訴え切実 いら立つ職場/物資足りない

2020年05月 7日掲載

 新型コロナウイルスの感染拡大に直面する県内医療現場を巡り、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班は無料通信アプリLINE(ライン)を通じ、医療従事者の声を募った。「職場の皆がいら立っている」「病院勤務というだけで冷ややかな態度を取られる」。寄せられた声からは、日ごとに切迫感を増す現場で働き続ける医師や看護師らの、理解と支援を訴える本音が伝わってきた。

(島田周、山本純哉)

 「恐怖を抱えながら毎日勤務している」。北信地方の総合病院。現在感染者は受け入れていないが、40代の女性看護師は感染リスクと隣り合わせのストレスを明かした。

 今月7日、東京都など7都府県に緊急事態宣言が出されて間もなく。患者に付き添っていた家族が帰りがけ、ふいに「実は東京から来た」と明かした。事前に知らせてくれれば接する人数や病院内のエリアを限定できたが、どうしようもなかった。

 感染が急拡大していた米国から帰国後、自宅待機や連絡をせず直接訪れた患者もいた。患者や治療に向き合うのは当然だが、精神的な負担は大きい。女性は「同僚を含めてかなりいら立っている」と職場の空気を説明する。

 新型コロナの患者を受け入れている県内の感染症指定病院で働く30代女性職員。いま最大の懸念は医療物資の不足だ。病院からは「マスクの在庫が4月で切れる」と言われ、本来なら取り替えるマスクにガーゼを挟んで使い回す状態が続く。

 厚生労働省は4月24日付で、長野県内の感染症指定医療機関や急性期病院などに高性能マスク計1万2千枚、防護用のガウン計9千枚、顔を覆うフェイスシールド計1万6千枚を配ると通知した。「うちにも順次、届くはず」。そう聞かされて何日もたったが、まだ支給はない。

 東信の病院勤務の60代女性看護師も「採血時など、患者さんと対面で接するのが不安」と漏らす。防護具が足りず、支給もないため「市販のクリアファイルで顔を覆っている」という。

 医療従事者への偏見と感じた経験を語る人も。中信の病院に勤める40代女性看護師は、親戚から「あなたも感染しているんじゃないの」と心ない言葉を投げられたり、子どもを預けた保育園の職員から病院勤務と知って露骨に距離を置かれたといい「ショックだった」と振り返った。

 県内医療の現状について、御代田中央記念病院(北佐久郡御代田町)の清水一功理事長は「医療従事者に十分な装備が届かなければ、救急搬送を断る事例も生じかねない」と、支援の速度を上げる必要性を強調する。

 北信の60代の開業医男性からは、医院内で感染が広がれば診療が停止するとして、こんな訴えが寄せられた。「訪れる患者さんにも、いまは『医療者を守る』という意識を持ってほしいんです」

とは

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