地元農産物をドライブスルー方式で販売するファームはせの売り場=5月28日、伊那市長谷

新型コロナ 小規模農家も苦境「地元農産物食べて」

2020年06月 2日掲載

 新型コロナウイルスの感染防止対策で地域の農産物直売所が休業し、出荷先を失ってしまった―。安曇野市内の小規模農家の50代女性が、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に生産現場の苦境を寄せた。緊急事態宣言の全面解除後も、以前のような活況がすぐに見込めない中、「地元の農産物を積極的に食べ、生産者を応援してほしい」と訴えている。(関誠)

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 地場産品を扱う直売所は、住民に親しまれる地域農業の拠点であると同時に、観光客にも人気の場所だ。女性は今年、大型連休に合わせて出荷できるよう、アスパラガスを栽培してきた。

 例年は1日に100~200束を完売する人気だ。しかし、今年は主な出荷先の市内2カ所の直売所が休業。1店は再開したものの、もう1店は今も休業が続くという。結局、知人や親戚に無償で譲り、一部は廃棄せざるを得なかった。

 直売所の休業には理解を示しつつ、「たくさんの小規模な農家が同じように苦労していると思う」と女性。「収入が減って、努力のしようもない。見捨てられたような気持ちになる」と話す。

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 伊那市長谷の道の駅「南アルプスむら長谷」の直売所「ファームはせ」も31日まで休業中だ。地元の農業男性(66)は20アールで栽培するアスパラガスをこの直売所に出荷してきた。出荷が本格化するのは例年、大型連休後。「主要な販路がなくなってしまうかと、頭を抱えていた」と話す。

 販売先に困る農家のこうした声を受け、直売所を運営する農業法人ファームはせ(伊那市)は14日からドライブスルー方式で野菜の販売を開始。週3回、道の駅向かいの自社敷地にテントを張り、5月末まで地元農家が持ち込んだ野菜を並べる。

 「新鮮な農産物を安心して買いに来てほしい」と呼び掛けたところ、地元の人が頻繁に立ち寄り、購入してくれるようになった。男性もアスパラガスを出荷でき「おかげさまで野菜を廃棄せず5月を乗り切れそう」と喜ぶ。

 ファームはせは6月1日、感染対策を取って営業を再開する。インターネットの注文販売も始める計画だ。専務の羽場権二さん(33)は「地域住民や生産者に支えられて直売所があると改めて実感する。地場産品の魅力を伝えていきたい」と話す。

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 緊急事態宣言解除で、直売所の再開など経済活動は徐々に回復していくとみられるが、安曇野市の女性はどこまで収入が回復するか見通せない。感染の「第2波」への不安もある。それでも女性は「旬の野菜を消費者に届け、喜んでもらいたい」との気持ちを持ち続け、畑に向かう。

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