C130輸送機やCV22オスプレイが駐機している横田基地=16日、東京都瑞穂町から

米軍機飛行 長野県で目撃情報次々、見えぬ運用実態

2020年10月24日掲載

 県内で目撃情報が増加している米軍機とみられる軍用機。信濃毎日新聞は、読者との双方向型報道「声のチカラ」(コエチカ)のLINE(ライン)や、情報提供の電子メール(shakai@shinmai.co.jp)などに情報、動画、写真が寄せられるたびに米軍横田基地(東京都)に確認を求め、記事にしてきた。さらに新たな情報が集まり次の取材に。直近では16日にも諏訪地方で軍用機が低空飛行したとの話が読者からあった。基地周辺を歩き、県内の目撃例を改めて振り返った。

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 重たい音が響いてきた。「ゴオーッ」。16日午前、米軍横田基地(東京都)に向かって多摩川を過ぎた辺りで、上空に軍用機が見えた。地上との距離がこれほど近いのかと感じた。

 「簡単には引き揚げない。戦後100年になってもここにいるのではないか」。基地の米軍機を監視し続ける市民団体「羽村市平和委員会」メンバーの高橋美枝子さん(78)=東京都羽村市=が言った。

 県内に飛んできている可能性がある機体が離着陸する基地の今を確かめようと、高橋さんの案内で、周囲を車で走った。基地に沿って高さ2メートル超のコンクリート塀が続く。近くの建物の上階から見下ろすと、同基地のC130輸送機やCV22オスプレイが駐機していた。以前は金網で囲っていたので、基地内がある程度見えたという。

 「警告在日米軍基地」「不法な立入りは、日本国法律によって罰せられる」。英語と日本語で記された看板が至る所で目につく。

 在日米軍司令部が置かれる横田基地では毎日、軍用機が離着陸する。高橋さんによると、2018年のオスプレイ5機配備やC130輸送機の新型化に伴い、増加傾向だ。

 平和委員会が記録した19年度の離着陸は月平均2238回。イラク戦争が始まった03年度を超えた。20年度はさらに上回っている。最多は8月の3719回で、4、6月も3千回を超えた。日米合同委員会の合意で午後10時~翌日午前6時の飛行は制限されるが、7~9月は「夜間も時間外に戻ってくる異常な状態が増えた」。

 備品などの落下事故も起きている。6月には飛行中のオスプレイから地上などを照らすサーチライトの部品が外れてなくなり、7月はパラシュートが基地外に落ちた。その都度、東京都福生市にある防衛省北関東防衛局横田防衛事務所に原因の解明などを要請しているが、回答は限定的で不十分だという。

 7月には潜水具も基地外に落ち、地元の福生市議会が「これ以上、基地機能強化をしないこと」などを米軍、国に強く求めると決議。8月になって重さや大きさが明らかになった。高橋さんはいぶかる。「落下の事実は住民の通報で分かった。米軍の自発的な情報開示ではなかった。もし落下物が見つからなかったら、公表しなかったのではないか」(井口賢太、林和磨)

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 米軍や自衛隊の訓練空域「エリアH」に県内17市町村が含まれることは信毎が2015年、在日米軍などに取材して判明。年々、低空飛行への関心が高まっている。昨年は電子メールによる読者からの情報提供が3件あり、記事は計32本、動画は3本を掲載。今年は電子メールで12件、「声のチカラ」のLINEに11件寄せられ、記事は21本、動画は6本を載せた。「すごい音で恐怖を覚えた」「家族が危険にさらされるかもしれない」といった不安、「まるでアメリカの空のよう」「やりたい放題だ」といった目撃者の憤りも伝えている。写真を提供した梶田健司さん(72)=木曽郡大桑村=に話を聞いた。

 5月12日午後5時45分ごろ、自宅2階で聞いたことのないごう音を耳にし、慌てて一眼レフを窓の外に向けシャッターを切った。航空機が2機、木曽川に沿って北上し、一瞬で見えなくなった。山際すれすれを飛んでいるような感じを受けた。

 写真を確かめると、1機の翼に米空軍を示す「USAF」の文字。間近に目撃するのは初めてだった。佐久、上田、諏訪などで目撃が寄せられた―といった記事を見ていたから、木曽の上空にも飛んだと知らせた方がいいと思い、信毎の「声のチカラ」ウェブサイトに情報を寄せた。記者に写真を提供し、14日付朝刊に載った。地域で話題になり、報道に一役買えたと実感した。また何かあったら撮って知らせようと思う。

 なぜ大桑の空を飛ぶのか不思議だ。住民をあれほど驚かせるのだから理由を知りたい。飛行中の米軍機が故障したり機体から部品が落ちたりといった報道も見聞きする。住民がけがをしてからでは遅い。粘り強く追及してほしい。

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山田健太・専修大教授(言論法)の話

 軍用機の低空飛行に対する住民や読者の不安、疑問に一つ一つ丁寧に答えていくのはジャーナリズムの大きな役割だ。情報がなく何も分からなかったり、他の人と共有できなかったりすると不安は増長する。米軍の回答が不十分で問題解決に至らないにしても、事実を積み上げ確認していくことが不安や疑問を少しでも和らげる。地方紙として住民の声を記録していく意味は大きい。飛行ルートや時間帯などが日米地位協定を逸脱していないか、1件ごとにデータ化できるといい。本来は国がやるべきだが、きちんとすべきだと訴えることが第一歩。問題意識を地域で共有していくことが大事だ。

とは

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