伊那市職員から商品券と名簿を受け取る区長=11月

「金券」の商品券配付 依頼の自治会役員「トラブル心配、負担感も」

2020年12月11日掲載

 伊那市が新型コロナウイルス対策で打ち出した75歳以上の市民に1万円分の商品券を配布する事業は、区や組など住民自治組織の役員が直接、地域を回って配った。「市の責任で行うことではないでしょうか」。役員を務める男性が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に疑問の声を寄せた。現金同様に使える金券の配布。実際に届けるまで気が抜けず、負担を感じたという。(春日基弘)

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<市側―郵送は中を見ない可能性>

 新型コロナの影響に伴う経済対策として、市が発行したプレミアム付き商品券は、申し込んだ市民が市役所や支所で購入する仕組みだった。今回は高齢者向けだったこともあり、原則、自治組織を通しての配布となった。

 市社会福祉課によると、郵送では中を見ない可能性もあるため、役員に手渡しで声を掛けてもらうのが良いとの判断もあった。松沢健係長は「顔見知りから一声掛けて渡されれば、郵送よりも効果的と考えた」と説明する。

 市側の思惑が役員によっては懸念を招いた。男性は仕事をしており「決して暇ではない。考えたくはないが、着服だって起こり得る」と首をかしげる。別の役員からも「配った、配っていないという事態が起きないか心配」との声が上がった。

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 商品券を配布する対象者は1万1224人、8570世帯。市は9月下旬、各区長宛てに文書で協力を依頼した。10月には各地区の区長会などで趣旨を説明。75歳以上の市民の名簿を作り、配布した際に印鑑か署名をもらう方式を採用した。

 市内の住民自治組織は全89区あり、区は「町」、「組・班」という下部組織で構成される。今回は町の代表「町総代」や組の代表「組長・班長」が配布したケースが多かったとみられ、男性は11月に入って町総代から「市の依頼」として配布するよう知らされた。

 「決まったことが既成事実として伝えられ、上意下達のように感じた」と男性。「なぜ組長が...」という疑問を抱えながら6世帯に配布した。不在者もいて、3回目の訪問でようやく渡すことができた人もいたという。

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 市が自治組織に商品券の配布を依頼する根拠は、区長や町総代に委嘱する「行政事務連絡員」だ。普段から市の広報や行政文書などの配布を頼んでいる。今回の商品券についても同じ役割を期待し、区長や町総代向けの説明会で協力を求めたとする。

 だが、声を寄せた男性は組長で、区長らを対象にした説明会があったことは、記者が伝えるまで知らなかった。男性は地域で暮らす上で協力はしたいとし「自治組織ありきではなく、仕事を依頼する場合は納得できる説明をしてほしい」と訴える。

 今回の配布には、約2千人の役員が携わった。市社会福祉課の久保田玲課長は商品券は順調に配布されたとし「地域に理解してもらい、協力していただけた」と説明。一方、負担を感じる役員がいることについては「今後、同様の事業があれば、進め方を工夫したい」と話している。

とは

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