伊那市の指定ごみ袋。上伊那地域の8市町村共通で、氏名の記入欄が設けられている

ごみ袋に「記名必要」長野県の9割、賛否の声

2021年01月 5日掲載

 正月休みなどでごみがたまった家庭も多いはず。日常生活とは切り離せないごみを巡り、「ごみ袋への記名は必要でしょうか」との疑問が、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に届いた。自治体指定のごみ袋は、分別ができているか確認できるよう、半透明の素材が多い。情報を寄せた塩尻市の40代女性は「生活が見られている気がする」と懸念する。プライバシー保護の要請は高まる一方、県内自治体では記名式を採用している市町村が大半だ。(森優斗)

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 記者は学生時代、東京都内で過ごしたが、自治体が指定するごみ袋はなく、記名することもなかった。昨年春、伊那支社に赴任して伊那市に住み始め、記名欄に驚いた。女性の疑問に共感する部分もあり、伊那市で取材に取り掛かった。

 12月中旬の午前7時半ごろ、市内のごみステーションには、年配の男性や主婦らが次々と可燃ごみを持ち込んだ。近くに住む男性(69)は自宅で袋をしばり、出す前に油性ペンで名前と組名、電話番号を書き込んだ。「長いこと書いているから習慣になっている」。ただ、記名欄が見えないよう裏向きにした。それは「個人情報が気になる人の気持ちも分かる」からだ。

 伊那市生活環境課によると、市内では2003年4月に現在のごみ袋を導入。担当者は「分別が不十分のままごみステーションに出すと、収集されずに残る。出した人が分かるよう、記名をお願いしている」と説明する。

 市内では必ず記名が求められているというわけではなく、ごみステーションを管理する地区ごとに、地区の通し番号や屋号、アパートの部屋番号などを記入することを決めている。市は「ごみを出した人が判別できれば記名でなくても問題ない」とする。

 本紙に声を寄せた女性が住む塩尻市はどうか。市は条例施行規則で「指定袋には、搬入者の氏名又は搬入者が識別できる表示をすること」と定めている。市生活環境課に尋ねると「出したごみに責任を持ってもらう必要がある」と答えが返ってきた。

 規則上、原則記名とする理由について、担当者は「客観的に識別できる」と説明。市にはこれまで、プライバシー侵害を懸念する声は寄せられていないというが、気になるごみを出す場合は別の袋に入れて二重にするか、クリーンセンターに直接持ち込むよう案内しているという。

 声を寄せた女性は10年以上前に県外から移住し、地元地区の役員から「フルネームを書いて出してほしい」と言われたが、納得できないでいる。個人情報が気になる郵便物は細かくした上で、外から見えていないか、ごみ袋をぐるっと確認してから出すという。

 「地元の人は当たり前かもしれないけれど、引っ越してきた人は戸惑う。個人が特定されれば防犯上も危ない。今の時代に合ってないのではないでしょうか」

 県によると、記名を求める県内自治体は今年5月1日現在、77市町村中で9割近い69市町村。「分別が不十分な場合に排出者を特定するため」といった理由からだ。一方、記名式を採らない長野市は「プライバシーを考慮」、飯田市は「記名の有無によらず、分別が不十分なごみは(一定程度)出る」としている。

とは

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