ベビーカーに乗せた子どもの足を優しく握る若い母親。通信制高校の勉強をしながら看護師を目指している

望まぬ妊娠、転学、出産...18歳当事者のメッセージ「一人で抱え込まないで」

2021年01月15日掲載

 長野県内の公立高校に通う生徒の妊娠や退学を報じた昨年6月の信濃毎日新聞の記事を読み、県内在住の女性(18)が「声のチカラ」(コエチカ)取材班にメッセージを寄せた。「実体験を誰かに伝えたい」。私立高校在学時に妊娠が発覚し、望まないまま転学。その後、無事出産し、10カ月になる男児を育てている。妊娠が分かった時、どれだけ心細かっただろう。若い母親は「一人で抱え込まず、妊娠について知ることが大切」と訴える。その思いを共有したい。(島田周)

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<元の学校には不信感 知識教えた医者や保健センター>

 県北部を中心に大雪となった昨年12月中旬の朝、両親や姉が仕事や大学に出掛けた後、自宅前の雪をかいた。その後、まだ雪が舞う中、男児を抱きかかえて初心者マークを付けた車に乗り込み、保育園に送り届けた。自宅に戻った女性は机に向かい、通信制高校の課題を始めた。

 「大人や社会に不信感を覚えたこともあった」。当時県内の私立高校に在籍。2年生だった一昨年11月に妊娠が分かった。学校側に伝えると、翌日から休むよう指導された。女性は親と学校の協議に加わることを許されず、自分の言葉を伝えられないまま、通信制への転学が決まった。

 後になって同級生から聞いたところ、学校側は転学について、出席日数不足や病気を理由に挙げたという。成績が良いとは言えなかったが、授業には出ていた。「わざわざうそをつく。教育って誰のためにあるの?」。生徒を大切にしてほしかった。

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 妊娠が分かった時はすでに、人工中絶手術ができる22週未満を過ぎていた。父親は交際中の同級生。妊娠が発覚する前、「もし赤ちゃんができていたらどうする?」と尋ねたことがあり「今は中絶するしかないんじゃない」と言われたことがあった。

 そんな会話を思い出し「中絶」という単語をインターネットで検索した。「何の罪もない赤ちゃんを中絶することがどんなものか分からず、何度調べたか分からないくらい調べた」。妊娠の兆候、人工中絶、里親制度...。自分なりに知識を得た。

 誰にも相談できず、時間が過ぎた。最初に妊娠に気付いたのは母親。産婦人科医院に行くことになった。初めての産婦人科で、医師は「守られるべきあなたが、独りどこかで赤ちゃんを産み、死なせることがなくて本当に良かった」と言ってくれた。

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 若い母親は振り返る。「今思えば、自分に一番必要だったのは『知ること』だったと思う。私は無知でした」。どこに相談すればいいのか、相談したとして秘密は守ってくれるのか―。産婦人科医院では自分で育てるか里親に出すか、選択肢を示してくれた。保健センターでは子どもの大切さや親になるとはどういうことなのかを学んだ。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校などで交際相手と過ごす時間が長くなり、各地の医療機関や支援団体には10代、20代からの「妊娠したかもしれない」といった相談が増えた。「その子たちや、その子たち以外にも、必要なことを知る機会をつくるべきだと感じる」

 学校に対しては「妊娠が分かったら即退学、即転学と決める前に、生徒の意思を受け止めて学習の機会を奪わないでほしい」。この女性は言い分も聞かず、学びの場から一方的に排除されていくかのような教育の在り方に疑問を感じたという。

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 女性は昨年2月に出産。産まれた子どもを見て「一人で育てられるだろうか」というそれまでの懸念が、「受け入れて生きていく」という覚悟に変わった。まだ子どもの父親とは同居せず、今は互いの実家で暮らす。かつての同級生たちは「私が妊娠した時には相談に乗ってね」などと声を掛けてくれる。

 両親は子育てに協力的だが、共働きで忙しく、新型コロナ収束も見通せない。「子どもが病気で保育園に預けられない日はどうしよう?」。不安を抱えながらの毎日だが、看護師の資格を取るという目標がある。年が明け、卒業を懸けたテストや専門学校の入学試験が控えている。

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<6月29日付の本紙記事>

 6月29日付の信濃毎日新聞朝刊の記事は、県教育委員会への情報公開請求を基に、県内の公立高校が2015~16年度に生徒計45人の妊娠を把握していたことを取り上げた。情報公開請求で得た文書を参考に状況を分析したところ、3分の1強の16人は学業を続けず退学していたことも判明。多くの反響が寄せられた。

とは

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