松本市内のクラフト店。ナップサックやコップ袋の見本や型紙が並ぶ

園児の袋、手作りは必要?「強制でない」と言うが...

2021年04月 1日掲載

 保育園や幼稚園の入園で、各家庭が準備に追われる時期。4月から次男を保育園に預けた東信地方の女性(36)から「園生活に必要な袋類は、なぜ手作りなのでしょうか」との疑問が「声のチカラ(コエチカ)」取材班に寄せられた。仕事が忙しく裁縫も好きではない。「市販の製品は駄目なの?」。手作りか市販かで家庭が評価される風潮にも違和感を抱いている。(島田周)

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 女性は、次男を預ける公立保育園から、入園を前に「作ってください」と書かれたしおりを渡された。寸法が詳細に示されたコップ袋、絵本袋、パジャマ袋、着替え袋...。「決められた寸法で、手作りでなければ園生活に支障が出るのでしょうか」

 女性は男児2人を育てるシングルマザー。長男の入園時には手芸店に依頼した。次男を預ける保育園は手作りを推奨。裁縫はあまり得意ではないという。「そもそも女は裁縫ができるという認識だっておかしい。ひとり親の父親だっているのに」と訴える。

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 長野、松本市の公立保育園を所管する部署に聞くと、手作りを前提とする取り決めは特になかった。長野市保育・幼稚園課は「家庭の在り方は多様化している。保育士も決して手作りでなくていいという認識を積極的に共有している」としている。

 建前はそうかもしれないが、袋類の手作りに対する女性のような疑問は、他の母親からも聞く。女性が次男を預ける保育園のある自治体に尋ねた。「手作りを強制していることはない。ただ、園の方針で手作りを求めることはあるかもしれない」。担当者はそう説明した。

 長男を私立保育園に預ける長野市の母親(34)は「共働きで忙しく、市販の物で間に合わせている」とする。保育士や周りの保護者から何か言われた経験はないが、それでも「子どもに友達が持っている手作りの物をうらやましがられると、心が痛む」。

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 手作りの方が「愛情が込められている」との考え方は依然としてある。だが、松本短期大幼児保育学科の内藤美智子教授(67)は、そもそも保育園は働く親を支える施設とし「愛情を示す手段は手作りだけではない。苦手なことは無理をせず、楽して良い」と助言する。自身も子育てをしていた約40年前は、既製品を購入していたという。

 近年は裁縫を代行するサービスもある。長野市の手芸店「クラフトハートトーカイ川中島店」は保育園用の袋類をオーダーメードで受注。同店など県内で11店舗を経営する藤久(名古屋市)運営部の原隆大さん(32)は「オーダーメードはもはや一般的。皆さん、ライフスタイルに応じて利用している」。

 疑問を寄せた女性は今回も長男の時と同様、手芸店に頼むことにした。引け目は感じている。「保育園が『市販でも構いません』と言ってくれれば、気が楽になるのに...」

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