立山の弥陀ケ原(上)と白山の弥陀ケ原(下)。どちらも高山植物が生い茂り、のどかな雰囲気が漂う(白山の写真は白山市観光連盟提供)

立山と白山 弥陀ケ原や室堂 いくつも同じ地名 1000年前の山伏 名付け親?

2021年08月 3日掲載 (北日本新聞社)

「弥陀ケ原」「室堂」と聞き、すぐに立山を思い浮かべたあなたは、根っからの富山県民に違いない。ところが、石川県の霊峰・白山にも「弥陀ケ原」や「室堂」など同じ地名がいくつもあるという。両県を代表する二つの山には何か関連があるのだろうか。地図を広げて調べ、専門家に話を聞くと、約千年前の山伏たちの思いが浮かび上がってきた。 (山岡一成)

 きっかけは「あなたの知りたいっ!特報班(知りとく)」に届いた投稿だ。「白山と立山には同じ地名があるけど、どうして?」。地図を見るとなるほど、弥陀ケ原、室堂だけではない。「地獄谷」「不動滝」など立山でなじみ深い地名がいくつも見つかった。

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 専門家に話を聞こうと、立山博物館の高野靖彦学芸課長に疑問をぶつけた。すると「仏教と関わりがあるのは間違いありません」。弥陀ケ原は阿弥陀如来がいる場所を、室堂はもともと宿泊所(室)と仏をまつる御堂があり、修行の拠点となった場所を指すという。確かに、他も仏教を連想させる名称ばかりだ。

 ならば、立山、白山とともに「日本三霊山」と称される富士山にも室堂や弥陀ケ原があるのでは|。期待して調べてみたが、見つからなかった。なぜだろうか。

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 「『弥陀ケ原』『室堂』などの名付け親は、立山や白山で修行していた山伏たちだったとみられます」と高野さん。世紀末から世紀初め、山伏が立山や白山で修行していたことを記す文献が残っており、「最初に修行した山で付けた地名を、もう一つの山に充てたのでは」。それぞれの山で修行していた別々の一派が、偶然同じ名前を付けた可能性も考えられるという。「同じ仏教用語を使っていたはずなので、否定はできません」と話す。

 白山側にも聞いてみた。白山ろく民俗資料館(石川県白山市)の山口一男(いちお)館長も〝山伏説〟を支持し、「仏教的な地名が付くのも、共通する名前が多いのも当然だ」と語った。

 とはいえ、立山と白山ほど共通する地名が多い山も珍しい。高野さんは「植生や景観などに似た点が多かったからではないか。富士山とは、この点が大きく違う」と推測する。

 そう言われ、立山と白山それぞれの「弥陀ケ原」の写真を見比べると、高山植物に覆われた風景は驚くほど似ている。夏になると、散策を楽しむ登山客でにぎわうそれぞれの弥陀ケ原。約千年前、「阿弥陀如来がいるに違いない」と信じて過酷な修行に打ち込んだ山伏をふと想像してみた。

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