無償配布する生理用品を入れた紙袋を見せる上田市の担当者

生理の貧困 用品無償配布が低調なわけとは?

2021年08月20日掲載

 困窮者支援のため、生理用品の無償配布を始めた県内の自治体担当者から「受け取りに来る人がほとんどいない」との悩みが本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。自治体による無償配布は、新型コロナウイルス感染拡大による経済的困窮で生理用品を買う余裕がない「生理の貧困」が社会問題として注目される中で広がった。取材を進めると、他の自治体でも同じように利用が低迷していることが分かった。いったいなぜなのか。(牧野容光)

■少ない受け取り例

 悩みを寄せたのは東信のある自治体の50代女性担当者。5月中旬に無償配布を始め、地元ケーブルテレビの番組で告知したほか、担当窓口にチラシを置いたが、2カ月間で受け取りは3個だけ。「必要な人はもっといると思うのですが...」と首をかしげる。

 「生理の貧困」が注目されたのは、大学生らの任意団体「#みんなの生理」が高校生以上の学生を対象に2月中旬から実施したアンケートなどがきっかけだ。アンケートでは671件の回答のうち「過去1年で金銭的理由により(生理用品の)入手に苦労した」との回答が約2割を占め、コロナ下の困窮の実態が浮かんだ。瞬く間に、多くの自治体が無償配布に乗り出した。

 中野市は4月下旬に開始。だが、3カ月ほどの間に市役所や市社協の窓口で、いずれも生活困窮で相談に訪れた人に20個余りを手渡しただけ。生理用品を求めて来る人はゼロだった。上野聡志厚生保護係長は「全国的に報道されているのに...。もう少し受け取りに来る人が多くてもいいのかなという印象」。上田市も5月上旬から市役所窓口で配布を始めたが受け取りは少ない。佐藤知子・人権男女共生課長は「市役所まで来ること自体が大変なのかも...」。

■そこにある心理的ハードル

 「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さん(23)=東京都=は「関心が広がっていることは大きな一歩」とした上で、受け取りが進まない状況について「公衆の面前で生理を語ることへの心理的抵抗感が一因」と説明する。

 心理的抵抗は確かに、取材の中でも耳にした。中野市の上野係長は「ポスターを張るといった表だったPRができなかった。窓口まで受け取りに来る人も心理的ハードルは相当高いと思う」。千曲市の宮坂敏人権・男女共同参画課長も「自分も仕事上では生理の話をできるが抵抗がある」。

 こうした"抵抗"は受け取る側も同じだ。中信の県立高校に勤める50代養護教諭は「生理用品って女性用の下着と同じようなイメージ。人前で受け取るのは恥ずかしい」。伊那市の40代自営業女性も「地元の役場って学生時代の友達もいる。そんな場所に生理用品を受け取りにいくのはちょっと...」と話す。

■当たり前のこと 語りやすい社会に

 こうした状況に、「#みんなの生理」の谷口さんは「生理が当たり前のこととして語り合えないことが受け取りにくさだけでなく、社会のさまざまな面に影を落としている」と指摘する。

 例えば学校では、生理による体調不良で体育の授業を休むと欠席扱いになり成績に響くこともある。企業では、ひどい生理痛があっても「生理休暇」を取ることが難しい。「社会の仕組み自体が"生理のない体"(健康な男性)を前提にデザインされているからだ」(谷口さん)

 谷口さんは「男女の垣根を越えて生理を語り合うため、まずは生理について正しく知ることが大切」と指摘。本や新聞などで正しい情報を得つつ「『生理の貧困』とは何かや、生理をどうケアすればよいのか―といった話から入ると、語り合いやすいと思う」と話している。

とは

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