数百人分の自治協名簿 長野市職員かたる男が持ち去る 市の対応に疑問の声が

2021年08月30日掲載

 「住民自治協議会(自治協)の役員の名簿が不審者に持ち出されてしまいました」。長野市内のある区長から本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班にこんな不穏な情報が寄せられた。持ち去ったのは「市職員」を名乗る男。だが、自治協を所管する市地域活動支援課は、個人情報を持ち出した職員はいないことを確認したという。ただ、市の対応はそれっきり。同課は「情報提供や注意喚起する立場にもない」としており、こうした姿勢がさらに不安を広げている。(牧野容光)

 個人情報が持ち去られたのは市東部の自治協。持ち去られた名簿は「地区役員報告書」の原本だ。A4判で約20枚にも及び、区長や防犯指導員、防災指導員、日赤奉仕団員、環境美化委員の数百人分の氏名と住所、電話番号が記載されていた。

 事務局長が取材に応じた。事務局長によると、男は5月19日午後4時ごろ事務局窓口に訪れたという。「市役所の防災担当者だが、避難名簿を作るために必要だ」と名簿提供を要請。事務局長はその場で名簿を手渡した。

 自治協ではその日、理事会と代表区長会があり、事務局長は対応に追われていた。3日後には自主防災会の研修会が予定されており、男の氏名や連絡先などを確認せずに帰してしまった。その後、長野中央署に相談した。

 事務局長は、男の容貌を覚えていた。男は40代くらいで身長170センチほど、灰色がかったシャツとスラックスを着ていたという。

 幸い、名簿の写しを支所が保管しており、自治協の業務に支障はない。実害も確認されていない。ただ、2カ月余りが経過した今も持ち去られたまま。事務局長は「深く反省している。再発防止を心掛けたい」。

 この事案について市地域活動支援課は支所経由で把握。市危機管理防災課に問い合わせた上、市職員がこの自治協を訪れ、名簿の提供を求めた事実はなかったことを確認した。だが7月末までに他の31の自治協に情報提供したり注意喚起したりはしていない。畑順子課長は「自治協は下部組織ではなく『協働のパートナー』。だから、市役所はこの事案について情報提供したり注意喚起したりする立場にない」とする。

 こうした対応に他の自治協からは疑問も出ている。市北部の自治協の事務局長は「他の自治協でも起こり得る事案で情報提供ぐらいはあってもいい」。市南部の自治協の事務局長も「『協働のパートナー』だからこそ注意喚起が必要」とする。今回、情報を寄せた区長は「再発防止のため市全体で対策を考えるべきではないか」としている。

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 【長野市の住民自治協議会】 「市及び住民自治協議会の協働に関する条例」に基づき、住民側の申し込みによって市が認定した団体。2016年4月に若槻地区で設立されたのを皮切りに現在32地区にある。市はあくまでも私的な団体と強調するが「地域いきいき運営交付金」を一括交付し、21年度は広報配布や投票管理者・投票立会人の推薦、ごみ集積所におけるルール違反への対応など18の「必須事務」を自治協に依頼。自治協役員は区長らで構成し、公的色彩が濃い。

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