生け捕りにしたシロマダラをバケツに入れた古川さん=9月24日、長野市七二会

「幻のヘビ」シロマダラ、珍しい?珍しくない? 目撃情報、県内外で続々

2021年10月25日掲載

 夜行性で人目に触れることが少なく「幻のヘビ」とも称されるシロマダラを捕獲した―との記事が先月、本紙地域面に相次いで掲載された。だが、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班には「自分も捕まえた」との情報が他にも。本当に「幻」なのか―。取材すると、地域の研究者や愛好家が減り、希少種の生息情報が不足している事情が見えてきた。

 9月8日付の北信面には上水内郡飯綱町の細野利男さん(75)が近所を散歩中に道端で見つけた―との記事が載った。これを読んだ長野市七二会の市臨時職員、古川福三(ふくみ)さん(77)は、自分は2日前に見つけていた―と本紙に一報を入れた。自宅近くの畑で野菜に付いたナメクジを除去していた時で「珍しいヘビだと思い、スマホで撮影した」。

 一方、同市吉の丸山保重さん(81)は同10日夜、庭先で偶然見つけ「生け捕りにした」。同市信州新町越道のグラフィックデザイナー中村晃二さん(56)も同6日夜、猫が口にくわえて自宅玄関先に持ってきた。「初めて見たので驚いた」

 古川さんと丸山さん、中村さんが撮った写真はその都度、コエチカ取材班から爬虫(はちゅう)類に詳しい同市城山動物園飼育員、高田孝慈(こうじ)さん(48)に「同定」を依頼。いずれもシロマダラに間違いない―との回答を得た。

 そんな確認作業を繰り返していた同22日、古川さんから再び取材班に連絡があった。「昨晩、シロマダラを生け捕りにできたから今度は実物を見に来てよ」。ちょうど、飯田市千代の自営業須川英樹さん(50)が生きたまま捕獲した―との記事が本紙飯伊面に載った日だった。

 「幻のヘビ」がこれほど目撃されていいのか―。試しに、本紙などの地方紙と共同通信でつくるニュースサイト「47NEWS」で検索すると、目撃例は他県でも相次いでいることが分かった。9月には少なくとも群馬県太田市、兵庫県丹波篠山市、千葉県いすみ市、岐阜県美濃市、茨城県常陸太田市、神奈川県葉山町、大分県九重町で目撃され、それぞれの地方紙に掲載された。

■実は「絶滅危惧か評価する情報が不足している種」 背景に地域の研究者不足

 シロマダラは日本の固有種。低山地に生息し、小型のトカゲなどを食べる。県内では1980~90年代に東北信を中心に見つかったとの記録が残るが、宅地開発や河川改修の影響で餌が減るなどし、個体数が減っている可能性もあるとされてきた。

 高田さんは「夜行性のため、目にする機会が少なかっただけかもしれない。少なくとも(複数の目撃がある)長野市内には一定程度、生息していることが推測できる」と認める。

 実は、県版レッドリスト(2015年)でも「(絶滅危惧かを)評価するだけの情報が不足している種」に分類されている。

 「希少種に関する情報は、いわゆる『在野の研究者』からの情報に支えられている」。県環境保全研究所(長野市)の主任研究員北野聡さん(54)はこう話す。水生生物が専門の北野さんは20年ほど前、希少種に関する情報の不足を補う狙いで、県内の教師らとともにメーリングリストを作った。

 だが「在野の研究者」の代表的な存在である小中学校や高校の教師たちは学校業務が多忙化。フィールドワークに没頭する時間的余裕を失い、希少種の情報が集まりにくくなっているとの指摘があるという。

 一方、ここ20年ほど、県内で南方種の昆虫が増えるなど地球温暖化などによる環境変化を実感する―と話すのは、安曇野市三郷の環境省希少野生動植物種保存推進員、那須野雅好さん(61)だ。

 那須野さんは30年前に地元で「三郷昆虫クラブ」を発足。子どもたちと虫捕り網を携え、定期的に野山へ足を運んできた。「地球規模の環境変化を知るためにも、それぞれが身近な自然に目を向けてほしい」としている。(牧野容光)

シロマダラを撮影したスマホの画面を見る丸山さん夫婦=9月15日、長野市吉

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