衆院解散どうみる? 信州の声

2021年11月 2日掲載

 10月14日の衆院解散を巡り、本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班で読者の意見を募ったところ、120人超のさまざまな声がLINE(ライン)やメール、ファクスなどで寄せられました。新政権発足を機に国民の信を問う姿勢への評価の一方、与党が選挙を有利に進めるための恣意(しい)的な解散だ―との批判も。一部を紹介しつつ、今回の解散をどう評価し、解散そのものをどう捉えればいいのかを考えます。(牧野容光、島田周)

■感染落ち着いた今がいい

 「今のタイミングでの解散が一番良かったと思う」。今回の解散について、こんな意見を寄せたのは佐久市のパート社員女性(61)だ。新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言などが9月末で解除されており「感染状況が落ち着き、以前より選挙活動を行いやすい環境も整った」と分析。衆院議員の任期満了が21日に迫る中で「"人流"が増える年末に近づけない方がいい」と、好意的に受け止めた。

 上田市の中小企業診断士、高司浩史さん(33)も肯定的に見る。「もともと野党も早期解散を求めていた」と指摘。「1年半におよぶコロナ対策や、コロナ下における経済対策など、信を問う意味でも、今が一番いい時期だ」と評価する。

■与党に有利なタイミング

 こうした見方に対し、松本市の50代自営業女性は、与党が選挙を有利に進められるタイミングでの解散だと見る。「自民党総裁選でメディアへの露出を増やし、その印象が薄れないうちに解散するという意図だ」と推し量った。

 自民党内では岸田新総裁の下、過去の現金授受問題の説明不足が指摘される甘利明氏が幹事長に就いた。こうした点もあり、長野市のパート社員女性(58)は「国会審議で、身内から不祥事などの『ボロ』が出る前に、急いで解散したのでは」と勘繰る。

■「森友」「桜」審議してから

 予算委員会を開かないまま解散したことに対しては批判も根強い。北佐久郡立科町の団体職員女性(52)は、国会審議を通じて森友学園を巡る財務省の文書改ざんや、安倍元首相の「桜を見る会」前日の夕食会費用補填(ほてん)問題などをきちんと掘り下げてほしかった―と残念がる。「早期解散で、今までの不祥事がうやむやになりはしないか」

          ◇

■「7条解散」果たして妥当?

 今回の解散はいわゆる「7条解散」と呼ばれる。コエチカ取材班には、そもそも「首相による解散は憲法違反」(伊那市の60代男性)といった意見の一方、「首相交代の是非を問うものとしてありだ」(松本市の50代男性)との声もあった。果たして妥当なのか。

 「気鋭の憲法学者」とも呼ばれる東京都立大教授の木村草太さん(41)に尋ねると、衆院解散の是非は「憲法学界においても、筋が悪い議論」だそうで「すっきりとは説明できない」と話す。

 木村さんによると、ほとんどの学者は、解散は内閣不信任決議案の可決などに伴う解散(69条解散)のみに限定されないとの説を支持。一方、7条解散には相応の理由が要るとの説も支持されている。

 木村さんは、党利党略やスキャンダル隠しなどが理由の解散は当然、違憲性が高いとの立場。そうした観点も踏まえ、首相交代を理由にした今回のような解散は「やむを得ない」と説明する。

 ただ、その手法に対しては「任期満了間際の解散という混乱を避ける方法はあったのではないか」と疑問視する。任期満了が迫る中で自民党総裁選になることも分かっていた。とすれば、総裁任期や総裁選日程に関する内規を変更するなど「努力があっても良かった」との考えだ。

 コエチカ取材班には「解散権はある程度縛る必要がある」(長野市の70代男性)との意見も寄せられた。

 木村さんは2017年3月の衆院憲法審査会に参考人として出席した際、解散権を制限する方法を提案したという。解散の宣言から解散までに期間を置き、衆院で解散理由を審議するといった案だ。

 そうすれば解散理由が明示され、投票の判断材料になる。後々の検証にも活用できる。ただ、この案はあまり注目されなかった。憲法審が森友問題の証人喚問と重なったからだ。木村さんは「今後は注目してほしい」と話す。

 木村さんが「違憲性が高い」とするのは17年9月の解散だ。当時の安倍首相は、少子高齢化や緊迫する北朝鮮情勢を「国難」とし、強いリーダーシップを発揮するための解散と説明した。木村さんは「多くの国民は今も分からないはず」とした。

          ◆

 〈7条解散〉憲法7条の「内閣の助言と承認」により、天皇の国事行為として行われる衆院解散。天皇に助言する内閣に独自の解散権があるとの考えで実施することから「7条解散」と呼ばれる。首相の解散権行使は、憲法69条が定める内閣不信任決議案の可決か、信任決議案否決の場合に限られるとの議論があったが、1952年の吉田内閣の「抜き打ち解散」以降、定着する。現行憲法下で内閣不信任決議を受けた解散は4回だけ。最高裁は同年、解散は極めて政治性の高い行為で、違憲審査は裁判所の権限の対象外との考え方を示している。

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