投票行く?行かない? 9割「行くべきだ」 「民主主義の根幹」「意見伝える手段」

2021年11月13日掲載

 31日に迫った衆院選に合わせ、投票に行くべきか、行かなくてもいいかを本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班が読者に尋ねたところ、30日までに150件を超す意見が寄せられた。9割方が「行くべきだ」との意見。長野市長選などの地方選も重なっており、関心は高いようだ。主な意見と識者の考え方を紹介し、投票の意義を考えたい。(2021年10月31日朝刊掲載)

■困窮「投票先考える余裕ない」声も

 「権利であると同時に義務」。伊那市の無職男性(76)は話す。一度も棄権したことがないといい「民主主義の根幹は国民一人一人の、1票ずつの積み重ねで運営していくもの」。行かない人に対し「民主主義体制が崩壊してもいいと思っているのでしょうか」と疑問も投げ掛ける。

 松本市の介護福祉士男性(50)も「投票率が下がると、一部の政党や団体の候補者が当選してしまう確率が上がり、社会的に不公平が生じる」と指摘する。

 長野市の契約社員女性(31)は必ず選挙に行っている。コロナ下に飲食を伴う会合に出席した議員や首長に理由を問いただす手紙を送ったり、公約の疑問点を各党に尋ねたりもしてきた。「選挙は国民の意見を伝える手段だ」

 一方、「投票しても何も変わらない」と諦めているのは同市の青木隆和さん(70)。今回は行くかどうか迷ったが期日前投票を済ませた。ただ、「候補は皆、『国民の力になりたい』と演説するが、当選後は大企業や経済人など有力者に配慮する政治家になってしまう印象」と話す。

 同市の無職女性(51)も「行かない」。離婚し、仕事を掛け持ちして2女を育ててきた。だが、2019年10月の台風19号災害で職場が被災。次の職が見つからないまま生活資金を取り崩している。「投票先を考える余裕すらない。官僚出身や世襲の候補ばかり。国民の声を実感できる人がいない」と嘆く。(牧野容光、島田周)

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■「主体的に関心が持てる環境を」 津田塾大総合政策学部准教授・中條美和さんに聞く

 選挙の度に問題となる低投票率。実際のところ、これは何を意味するのか―。政治参加や世論について研究する津田塾大総合政策学部准教授の中條美和さん(45)は「政治への不信や無関心と必ずしもイコールではない」とする。

 中條さんは背景には「よほどのことがない限り、すごく悪い方向には行かないだろう」という民主主義が根付いた戦後日本の政治システムへの安心感もあるとみる。その上で、投票に行かない人は「細かな不満はあるが大きく変えるつもりはないという判断でしょうか」と推し量る。

 民主主義について中條さんは「常に少数派を含めた代表制と効率性のせめぎ合いだ」とも。小選挙区のみの制度のように、多数決を重視すれば意思決定は円滑に進むが、少数意見を排除すると、全体主義になっていくからだ。

 多数派に占められた政治には、少数派はますます関心を失う。シルバー民主主義とやゆされる昨今、投票する側も大義を振りかざすのではなく、投票しない側の声に耳を傾けることも必要なようだ。

 今回、取材班に寄せられた中には「若者が政治に関心を持たないから駄目だ」という意見が散見された。ただ、県内の大学生を取材すると「主体性を重視しない教育をしておいて、選挙になったら、いざ『選べ』では酷だ」との意見も聞かれた。

 中條さんが指導する学生からは、議員定数を世代ごとの人口割合に従って、あらかじめ割り振っておくといった案も出ているという。「若者も、ジレンマを抱えながら政治と向き合っている」

 家庭や学校で大人が議論する姿を見せているか、職場などに公正に議論できる雰囲気はあるか―。中條さんは問い掛ける。投票に行くかどうかで社会が分断される前に「誰もが政治に主体的に関心が持てる環境をつくることが重要」と指摘している。

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 なかじょう・みわ 1976年東京都国立市生まれ。東京大大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士。テキサスA&M大Ph.D(政治学)。専門は政治行動論、世論調査、地方政治。著書に『知事が政治家になるとき』(木鐸社)。

中條美和さん

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