高校2年以上のHPVワクチン接種について助成を求めた東信地方の親子=2日

HPVワクチン「高2以上も救済を」

2021年11月26日掲載

 子宮頸(けい)がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、国が積極的な接種勧奨を再開する方向となったことを踏まえ、自費負担となる高校2年以上も無料で接種できる"救済措置"を求める複数の声が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。国が2013年以降に積極的な接種勧奨を中止し、接種を見合わせた当事者が少なくないためだ。HPVワクチンは小学6年から高校1年の女性なら誰でも無料で接種できる。高校2年以上でも予防効果はあるのか、国や自治体はどう対応するのか。(牧野容光)

■接種見合わせた当事者ら「助成あればありがたい」

 投稿が相次いだきっかけは10月23日付のコエチカの記事だ。「希望する高校1年生は11月中に接種を開始してほしい」との意見をコエチカに寄せた県厚生連佐久総合病院佐久医療センターの坂本昌彦医師へのインタビューで、後の研究でワクチンの安全性や予防効果が確かめられたことや、予防接種法に基づき無料で接種できる期間が限られていることなどを紹介した。

 この記事を踏まえて「ぜひ、救済措置を設けてほしい」との声を寄せたのは東信地方の市臨時職員女性(59)だ。ワクチンの安全性を疑問視する13年当時の報道内容や、国の接種勧奨中止も踏まえて長女(18)への接種を控えていたという。

 ワクチンは3回の接種が必要で、自費だと計5万円前後かかる。長女は東信の短大に通っているといい、女性は「経済的負担を考えると、助成してもらえたらありがたい」と訴える。

 北信の高校2年の女子(17)も「救済措置を設けるべきだ」とメールを寄せた。同級生の中には高校1年のうちに接種を終えた友人が3人いたという。だが3人とも母が看護師で、ワクチンについて詳しかったという。「一時的な接種勧奨の中止で、自分は正しい情報を入手できなかった」と悔しがる。

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 予防接種法はHPVワクチンの無料接種対象を小学6年から高校1年相当までの女性と限定している。HPVは性交渉を通じて感染するため、初めての性交渉より前の接種が最も有効なためだ。

 ただ、ワクチンに詳しい坂本医師によると、スウェーデンの研究では17~30歳でも接種すれば感染リスクは53%減少した。確かに17歳未満だと88%減少するため、より効果は大きいが、坂本医師は「高校2年以上でも十分予防につながる」と強調する。米国では26歳以下の全ての女性に勧められているという。

 HPVは感染しても大部分は体の免疫の働きで自然に体外に出て行く。ワクチンは複数のHPVの型を予防できることから、既に性交渉の経験があっても接種による予防効果が期待できるという。

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 こうした中、県外にはいち早く独自の救済制度を設けた自治体もある。

 青森県平川市は7月、市議会で取り上げられたことをきっかけに全国に先駆けて助成制度を設けた。対象は市内の17~19歳の女性。1月から来年3月末までに接種した実費分(1回当たり上限1万6753円)を助成することにした。

 実際に対象となったのは360人。10月までにこのうち1割強の40人が接種したという。例年だと新規接種は5、6人程度といい、担当者は「制度を多く活用してもらえている」と話す。

 国は対応しないのか。厚生労働省予防接種室は5日の取材に対し「現時点では救済措置は考えていない」とした。(2021年11月6日付朝刊掲載)

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