募金に自治会費流用、あり? 世帯の負担額定め、まとめて納入 「戸別に集金は大変」の声も

2021年12月27日掲載

 赤い羽根共同募金や緑の募金を巡り「常会(自治会)が募金額を定めて住民に負担させるのは、おかしいと思う」との投稿が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。声の主は東筑摩郡筑北村の柳沢忠さん(79)。所属する常会では、役員が戸別訪問して募金を集める手間を省き、1世帯当たりの募金額を常会側であらかじめ定めて常会費の中から徴収したという。柳沢さんは「募金は自発的意思に基づくべきだ」と訴える。(牧野容光)

 柳沢さんの常会は麻績川沿いに点在する23世帯が加入。常会費は1世帯当たり年8千円だ。本年度も例年通り、集めたお金を使って秋祭りやスポーツ大会の慰労会などを開くため、予算を2月の総会で可決した。ところが、感染症対策などのため慰労会などは中止に。浮いた予算を募金に流用することになった。

 流用額は赤い羽根共同募金が1世帯千円、緑の募金が同150円、日赤活動資金が同500円、村社協会費が同千円だ。額はいずれも、村の共同募金委員会や社協から「目安」として示された額といい、常会が各世帯に代わって納めた。

 常会長は取材に対し、4月の総会で説明し「異論はなかった」とする。従来、これらの募金や社協会費は役員が各戸を回って集めていたが、日中は留守宅も多く負担が大きかったという。「集落内は50歳代でも若い方。高齢化が進む中、役員の負担軽減が急務だった」

 一方、柳沢さんは総会には出席しておらず、後日配られた文書で知った。「本来は募金する、しないも含めて個人の自由意思に基づくべきだ。常会が1世帯当たりの金額を一律に決めたのにも違和感がある」と反発。常会費を流用して募金などに充てることを辞退する旨を伝え、常会側が返金に応じた。

 他の住民はどう受け止めているのか。80代男性は「常会費からの納入はやっぱり問題がある」と柳沢さんに同調。一方、役員経験者の70代男性は「やっぱり集金が大変。楽な方がいい」と常会側に理解を示した。常会長によると、柳沢さん以外にももう1人、常会費流用に反対する住民がいて返金に応じたという。

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■専門家「思想、信条の自由侵害」 同様の問題で裁判の判例も

 常会の対応に法的問題はないのか。関西大の西村枝美教授(憲法)は「住民の思想良心の自由を侵害し、違法と判断される恐れがある」と話す。

 同様の問題は裁判で争われたことがあるという。滋賀県甲賀市甲南町のある自治会が赤い羽根共同募金や緑の募金、日赤共同募金、市社会福祉協議会費を自治会費に上乗せして徴収することを決議したところ一部住民が反発。思想良心の自由を侵害していると、自治会を相手取って提訴した事例だ。

 上乗せ理由は筑北村の常会と同様に集金の手間を省くため。一審大津地裁判決は一部住民の請求を退けたが大阪高裁は2007年8月、全て任意に行われるべきだ―と指摘。「思想、信条の自由を侵害する」として自治会の決議を無効とした。最高裁も自治会側の上告を棄却した。

 西村教授は「集金が非常に大変だという事情はよく分かる」と理解を示す一方、「集める側が『何としてでも集めなきゃ』という風になってはならない」と指摘。「どうすれば強制せずに集められるか、解決方法を探る努力こそが大事」としている。

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〈常会(自治会)による募金集め〉常会が赤い羽根共同募金や緑の募金、社会福祉協議会費、日本赤十字社の活動資金を集めるのは、それぞれの主催団体から依頼を受けているためだ。赤い羽根共同募金の場合、県内では主催団体の県共同募金会が77市町村ごとにある下部組織を通じて依頼している。緑の募金を主催する県緑の基金は県や市町村などと連携し、依頼。市町村社協の会費は社協が直接、依頼している例が目立つ。日赤の活動資金は77市町村の役場や社協に設けた日赤の窓口を通じて依頼している。ただ、いずれも任意の「お願い」だ。

赤い羽根共同募金の資料などを示し、常会費からの支出に疑問を示す柳沢さん

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