県が配布しているヘルプマーク

知ってますか?ヘルプマーク 「気軽に声掛けてくれれば助かる」

2022年01月 8日掲載

 ヘルプマークの存在を多くの人に知ってほしい―。松本市の女性(43)が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班にこんな投稿を寄せた。マークは病気などで援助が必要な人が周囲に存在を知らせる目印。マークの認知度が上がらない中で、人知れず苦しんでいる人がいる。(牧野容光)

■テーブルに突っ伏したまま...声掛けられず

 2021年6月のある日の夕方だった。女性は松本市内の大型店で買い物中、強い不安や緊張を感じた。店内の休憩コーナーで腰を下ろしたが症状は治まらず、そのままテーブルに突っ伏した。

 実は、女性は極度の不安や緊張を感じ、混乱に陥るなどの症状が出る「不安障害」がある。この日もヘルプマークを付けたトートバッグを持ち歩き、テーブルの上にバッグを置いていた。

 だが、誰にも声を掛けられなかった。約5時間も! 従業員に声を掛けられたのは閉店間際の午後9時ごろだった。女性は水をもらい、携帯していた薬を服用。症状が和らぎ、タクシーで何とか帰宅できた。ただ、女性は「マークが認知されていれば誰かの目に留まったと思うのですが...」と残念がる。

 休憩コーナーの管理会社に聞くと、女性が突っ伏していた事実を把握していた。担当者は取材に「従業員には以前からマークを周知してきました。女性に声を掛けるのは遅くなりましたが、このような事案がなくなるよう、さらに徹底したいと思います」とした。

■長野県民調査、半数以上が意味知らず

 ヘルプマークはもともと東京都が2012年に作った。赤地に白の十字とハートを描いたストラップ状の目印で、日頃から装着しておくことで、周囲が声を掛けやすくなり、援助を申し出やすくなることを狙っている。

 県内では県の主導で18年7月に配布が始まった。市町村の福祉担当窓口や県の保健福祉事務所などで21年9月末までに1万7千個超が配られた。

 だが、県が20年度に県民を対象に実施した調査で「意味を知っている」と答えた人は44%にとどまった。2年前より2割ほど増えたものの半数以上が知らない状況だ。障がい者支援課の担当者も「認知度向上が課題」と認める。

 県が何もしてこなかったわけではない。19年12月には、県内の2個人と3団体にヘルプマークの普及に取り組む「ディレクター」を委嘱。普及啓発のための講演会活動などを行ってもらってきた。

 他にも誰もが暮らしやすい社会づくりを目指す「信州あいサポート運動」の一環で、マークや障害の多様性、支援の必要性などについての研修も開催し、21年3月末までに6万6311人が参加した。

■誰もが自分らしく生きられる社会に

 大型店で体調が悪くなった際、女性は一体どんな様子だったのだろうか。気になって当時の状況を再現してもらった。外見からは居眠りしているように見え、マークの意味を知っていたとしても声を掛けるのをためらってしまうかもしれない―。そう思った。

 では、実際にこんな場面に遭遇したら、私たちはどうすればいいのか。県のディレクターで松本市の会社員猪又竜さん(44)に尋ねると、「気軽に声を掛けてくれれば当事者は助かる」と話した。

 猪又さんもヘルプマークを付けて生活している1人だ。外見上、何の病気もなさそうだが先天性心疾患を患い、疲れやすく、立っているのがやっとの日もあるという。

 体調が良ければ援助が要らない日もある猪又さんだが「声を掛けられたら迷惑なんて思わないし、うれしい」。猪又さんはマークを介して誰もが自分らしく生きられる社会の実現を思い描く。「気軽に『助けてほしい』と言えたり、『助けるよ』と声を掛けたりできるようになってほしい」

大型店のテーブルに突っ伏した時の状況を再現する女性。ヘルプマークがはっきり分かる

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