長野市が小学校の新入生に配布している帽子。左が男子向けの野球帽型(キャップ)、右が女子用のメトロ帽子型(ハット)だ

交通安全の帽子はなぜ男女で違う形? トランスジェンダーに配慮が必要との声

2022年01月11日掲載

 交通安全のため小学校の新入生がかぶる黄色い帽子。長野市は例年、全新入生に無償配布しているが、なぜかデザインは男子が野球帽型(キャップ)、女子がメトロ帽子型(ハット)だ。「なぜ男女別なの?」。市内の母親(43)が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に疑問を寄せた。調べてみると、県内19市のうち6市が無償配布し、いずれも男女別デザイン。心と体の性が一致しないトランスジェンダーへの配慮から男女別をやめる動きもあるようだ。(牧野容光)

■長野県内6市が新入生に配布  デザインを統一する動きも

 長野市役所には、少なくとも1977(昭和52)年から無償配布を続けてきた資料が残る。当時から男女別デザインだったようだが地域活動支援課担当者は「明確な理由はよく分かりません」と話す。

 他に諏訪、駒ケ根、中野、茅野、塩尻5市が長野市と同様に黄色い帽子を新入生に配っている。いずれも男子がキャップ、女子がハットだ。駒ケ根市の担当者は「昔からの流れではないか」。

 デザインが男女別である点について、コエチカに投稿した母親は「男子は元気はつらつ、女子はおしとやかに―といった風に、性的役割分担の固定化につながらないか」と疑問を投げ掛ける。

 6市とも黄色い帽子は登下校に不慣れな新入生の交通安全のために配っており、着用はあくまでも任意。ただ、トランスジェンダーへの配慮から、デザインを統一しようとする動きもある。

 6市のうち長野市は2022年度からデザインを統一する方針。男女ともサイズを調節できるキャップとする方向で検討。担当者は「入学前からトランスジェンダーを自認する子どももいる中、配慮が必要」としている。

 塩尻市は22年度から新入生一人一人がキャップかハットを選べるようにする。各家庭の希望をオンラインで取りまとめて対応。担当者は「交通安全が目的で男女別にする必要性はない」と説明する。

 一方、諏訪市もデザイン統一を検討。ただ、21年8月に市内6小学校にアンケートしたところ、4校が「男女別のままがよい」と回答。22年度の統一は見送った。

 男女別のままがよい―と回答した小学校の教頭は「男女別デザインで今まで何も問題はなかった」。別の小学校の教頭は「改めて問われると、トランスジェンダーの当事者がどう受け止めるかなど、考えなければならないのかな」と話した。

■不要な「男女分け」なくして 啓発に取り組むNPOの中島潤さん

 県内の一部自治体が無償配布している男女別デザインの黄色い帽子や、そのデザインを選択制にしたり統一したりする動きをどう見るか。性的少数者を巡る理解や啓発の活動に取り組む認定NPO法人ReBit(リビット、東京)の中島潤さんに尋ねた。

 「まずは、子ども自身が自分はこれがいい―と選択できる状態にすることが大事」と中島さん。性的少数者への配慮だけでなく「子どもたち自身が自由に選べることは子どもの人権、その子らしさを尊重することだから」だ。

 ただ「自分らしさを選択する行為自体が、周囲の状況を踏まえると難しいことも考えられる」とも話す。「例えば、制服を選択制にしても(性自認が女性の)名簿上男子となっている生徒がスカートを選ぶことは難しい」

 そこで中島さんは「なくしても困らない『男女分け』はなくしてほしい」と訴える。性的少数者の中には自らの性自認を周囲には明かさずに生活する人もおり「学校でのさまざまな男女分けの場面で、どちらにも入れない人、自分が望む性別として扱われないことで生きにくさや困難を抱える人がいる」と指摘する。

 学校現場では「君」「さん」といった呼称など、至る場面で男女別の扱いがなされるが、大阪府や埼玉県では、全ての児童生徒が安心して過ごせる学校づくりの一例として「さん」に統一する取り組みを紹介する動きもある。中島さんは「不要な『男女分け』を統一することで、誰しもが生きやすくなることも考えてほしい」としている。

中島潤さん

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