若林さんが持ち込んだチラシの掲示をいったん断られたもんぜんぷら座の掲示スペース。新型コロナの影響もあり、イベントの掲示物はまばらだった=3月11日、長野市

公共施設のチラシ掲示、揺らぐ対応 長野市の複合施設、拒否から一転許可

2022年04月18日掲載

■可否基準、利用者に示さず

 「対応がころころ変わる。行政不信を感じます」。千曲市屋代の若林正浩さん(60)が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に不満を寄せた。通っている教室の作品展のチラシを、長野市新田町の同市複合施設「もんぜんぷら座」に持ち込んだところ施設内での掲示を断られた。後日、掲示基準の存否に関する質問状を市側に提出。すると、市は一転して掲示を許可したが、若林さんに基準は示さなかった。公共施設の掲示スペースは人と人をつなぎ、市民活動を支える場所のはずだが...。(牧野容光)

 若林さんが持ち込んだのは民間の長野県カルチャーセンター(長野市)が主催する写仏教室の受講生の作品展のチラシ。1月10日に施設を訪れた際、担当者に「イベントのチラシは、県などが後援したもの以外は掲示できない」と断られた。

 若林さんは「掲示可否の基準を知りたい」と考え、同16日、施設側に掲示基準についての質問状を提出する意思を伝えた。3日後、施設を所管する長野市の市街地整備課に電話すると「再検討した結果、掲示可能ですが、いかがですか」と投げ掛けられた。

 若林さんは一連の対応に不快感を持った。チラシ掲示に応じず、同21日、質問状を提出。2月2日、市役所から基準は存在するが「一般公開はしていません」とする回答が書面で届いた。

           ◇

 なぜ、チラシ掲示可否が一転したのだろうか?

 市街地整備課の小林弘和課長補佐は取材に「受け付けた担当者が当初、営利目的のチラシだと判断してしまった」と説明。チラシの下部に、教室の受講料金などが掲載されていたからだという。

 ただ、チラシの大部分は作品展の開催日時や場所などを告知する内容で、入場無料とも明記してあった。このため「再検討した結果、文化や芸術の向上に貢献するものだと判断した」(小林課長補佐)。

 だとしても市は若林さんに対し、掲示基準は「一般公開はしていません」と答えた。基準は行政担当者の恣意(しい)性を防ぎ、判断の公正や透明性を担保するためにある。市民には知る権利があるのではないか―。

 取材班が尋ねると、小林課長補佐は「『一般公開はしていません』というのは、基準を施設内の人の目に付く場所に張るといった対応はしていないという現状を説明しただけ。見せてほしいと言われれば見せる」と釈明した。

 市は取材班に、掲示基準が書かれた文書を明らかにした。A4判1枚。2014年以前に作られたといい、「掲示可否等の判断基準」「掲示の時期」など4項目が簡潔に記されていた。市や市教委が関わる行事のチラシなどは優先掲示するのに対し、民間の学校や教室による生徒、受講生の募集などは掲示しないものと定める。

 「今後、基準の文言に分かりづらい表現がないかなどを確認した上でホームページなどで公開する」と小林課長補佐。若林さんは「基準は初めから市民に公開しておくべきだ」と不信感を募らせた。

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