伊那市議選に立候補した27人のポスターが並んだ掲示板

「地元の方が出ないなら、私に」と選挙前の候補予定者に言われた... 禁止の事前運動?

2022年05月13日掲載

■公正な選挙実現と政治活動の自由のはざまで

 27人による激戦となり、4月25日未明に当選者が確定した伊那市議選(定数21)。告示より1カ月も前に「立候補予定者が訪ねてきて協力を求められた」との投稿が、同市の自営業男性(50)から本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。告示前の選挙運動は公選法が禁じ、違反すると禁錮刑や罰金刑もある。男性は「選挙違反ではないでしょうか?」と首をかしげた。(牧野容光)

 男性は3月中旬の週末、近くの実家で過ごしていた。すると、立候補予定者が訪れた。予定者は政策パンフレットを手に「地元の方が出られないようであれば、私にお願いします」と言った。

 この経緯を、交流サイト(SNS)に書き込んだところ、知人から「告示前なので禁止されている『事前運動』に当たります」「市選管に通報してみては」などのコメントが相次いだ。

 公選法は129条で、「選挙運動」は立候補の届け出日(告示日)から投票前日までしかすることができない―と定める。公平性を担保し、憲法が保障する公正な選挙を実現するためだ。

 県選挙管理委員会によると「選挙運動」とは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」。つまり特定の選挙が始まる前に、立候補予定者の誰かを名指しして1票を投じるよう頼む行為が「事前運動」になる。

 男性の実家を訪れた立候補予定者は「市議選」とは明示せず「自分に投票してくれ」などといった直接的な表現も避けていた。こうした点を踏まえると、事前運動に該当しない可能性もある。

 ただ、男性は「"地元の方が出なければ"と言われれば、近く始まる市議選を想起するし、政策パンフレットを手に"私に"と言われれば、投票を依頼されたものだと受け止める」と話す。

 公正な選挙を実現する一方、政治活動の自由も憲法が保障する重要な権利。そこで、選挙期間前でも「選挙運動」にならない範囲で、自らの政策を広めるために戸別訪問したり、政策パンフレットを配ったりする行為が行われているのが現実だ。

 選挙制度に詳しい神戸大大学院の品田裕教授(政治学)は「事前運動か否かは線引きが難しい」と指摘。行き過ぎた行為は選管や警察が対応することとした上で「政治を知るための機会と考えるか、選挙の公正さを欠くものだと感じるかは受け止める人によっても異なる。それぞれが感じたことを投票という形で表現するしかない」としている。

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