2020年度から変わる大学入試改革 問われる思考力・判断力・表現力 新聞の役割が重要に

小学校高学年になったら親子で新聞を―

信学会長野予備学校 小松 浩司先生(44/上田市)

「今回の入試改革案は、文科省の本気度を強く感じました」と小松先生は最初に強調しました。日本の大学に対する世界的な評価が下がっている現状で、大学を世界に通用するものに変え、グローバル社会で活躍できる人材、自分の意見を主張できる人を育てたいという意図が背景にあると言います。
小松先生は、信学会長野予備学校で20年以上にわたって大学入試を指導してきたベテランの先生です。この制度改革に対応するために、どんな勉強をすればいいか尋ねると、「これまでは高校3年の1年間みっちり勉強しても通用しましたが、それだけでは通用しなくなります。日頃から考え、自分で調べる習慣を身につけて、発表する力が問われますから。そのためには、新聞を読む習慣をつけることです」と断言します。なぜ新聞なのか、インターネットではだめなのでしょうか。
「ネットは興味あることを調べるには便利ですが、興味がさまざまな方向に伸びていく子どもには、あらゆる話題を盛り込んだ新聞がベストです。新聞は一方的な報道ではなく、別の方向からの視点、有識者の意見なども出ている。入試の傾向として多面的な見方ができるかという点も問われますから、これは重要です」
現在の中学2年生はもちろんですが、準備のためには小学校高学年になったら、新聞を読む習慣を身につけたい、と小松先生は言います。
「最初は地域の身近なニュースやスポーツなどでいい。だんだん自分の興味の方向に気づいていくでしょう。それだけでも意味があります。難しい内容については、親も一緒に読んで解説してあげたり、話し合ったりすれば、親子のコミュニケーションにもなります」
テレビ、インターネットとメディアは多様化していますが、今後、教育の面で新聞の果たす役割は重要になる-小松先生のアドバイスは、新聞の価値を改めて見直させるものでした。

「斜面」を視写する長野日大中の語彙コンテスト




長野日大中学 山口 美由紀先生(27/長野市)

大学入試対策を目的としているわけではありませんが、長野市の長野日本大学中学校では、国語力の向上を目指して積極的に新聞を活用しています。毎週末、信濃毎日新聞朝刊1面のコラム「斜面」の書き写し(視写)を課題として出し、生徒は月曜日に提出。視写が10回に達するごとに、「斜面」で使われていた単語の読み、書き、意味を問う「語彙(ごい)コンテスト」を実施します。コンテストは年3回行われ、総合点で優秀な生徒を表彰。対象は全学年ですから、生徒は3年間続けることになります。
きっかけは設立10年を経た4年前、国語力の向上を図る取り組みとして、とくに語彙力を高めることを目的に始められました。このコンテストを担当している山口美由紀先生にその効果を聞くと、「『斜面』はニュース記事とは違い、書いている人の気持ちや立ち位置が反映されている文章ですから、筆者の気持ちをくみ取ったり、その見方に対して自分なりの考えを持つようになったり、とても視野が広くなっていると感じます。池上彰さんが物事を多面的に捉えることが大事だと書いていましたが、その力が確実についてきています」
次の週末に出される課題を予想して、毎日、新聞を読んで単語を書き写す生徒、記事を切り抜く生徒もいるそうです。同校では、新聞各紙の社説を集めて授業で扱い、中学2年では新聞スクラップに取り組むなど、積極的にNIE(新聞を教材として活用する運動)に参加。これらの授業を通じて、生徒にとって新聞がとても身近な存在になり、現在の中学2年生から受けることになる大学入学希望者学力評価テストの記述式問題にも大きな効果を発揮しそうです。

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