怪しいTV欄

2018.6/03

働かせ方改革?笑いで無力感


 「法案は明日にも衆議院本会議で採決が見込まれています」というナレーションで始まったNHKの「クローズアップ現代+ 議論白熱!働き方改革法案~最大の焦点"高プロ制度"の行方~」を見ました。

 採決されれば、可決が予想される情勢。その後は参院も通過して成立する見通しなのですから、前日に放送される議論をどう見ればいいのか。

 ことを先取りしようとしたがるのはテレビの悪い癖でもありますが、その悪い癖に従えば、もうこれから議論をして問題点を追及したところで間に合わないだろうから、この法案の運用に直接関わる厚生労働省の責任者が出演し、しっかりと説明をしてもらいたい段階です。懸念される問題点について、見解を明言してほしい。

 でもそうではなく、議論のスタイルで賛成と反対、二つの立場の意見を放送する内容。いやらしい言い方をすれば「重要な問題点も反対派の意見という形で確かに放送しましたよ」というアリバイに見えなくもない。

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 この法案の現在の最大の焦点は、高度プロフェッショナル制度の導入。高度な専門知識を持ち、平均給与の3倍を上回る高収入を得ている人たちを、労働時間の規制から外すというものです。これを話し合うわけですが、いきなり驚かされます。

 賛成の立場で出演したのは、人材派遣大手のパソナグループの取締役会長、竹中平蔵氏。そして、働く人と仕事のマッチングをネット上で行う会社クラウドワークスの社長、吉田浩一郎氏。ともに、雇う会社と雇われる人の間をつなぐ仕事に関わる2人です。

 番組は、竹中氏の肩書をテロップで「東洋大学教授」「未来投資会議メンバー」。そして「ベンチャー企業の経営者」と紹介した吉田氏には「クラウドワークス社長」「新経済連盟理事」というテロップを出していましたが、2人について、雇用に関わる会社の代表者であるという説明はありませんでした。

 私はこれを見て、なぜそう紹介しないのかという疑問を通り越して、賛成そして推進の代表にこの2人を置いたことで、巷間(こうかん)言われている「働き方改革って、本当は働かせ方改革でしょう」を、キャスティングで説明しているのだと思いました。

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 反対の立場で出演したのは、労働問題を専門とする法政大学教授の上西充子氏、弁護士の棗(なつめ)一郎氏。働く側から、この制度の問題点、危ぶまれる点を指摘します。

 すると賛成派のお二人、とても楽しそう。半笑いで相手の意見を迎える。ともに少し笑いながら反論をする。

 以前も本欄で指摘しましたが、こうした笑いで議論における優位性を示すのは、今世紀に入ってから、この国の政治の場でよく見られる態度です。

 笑いが獲得する優位性とは、どういうものでしょうか。

 相手がまじめに意見を言うのに対して、笑いで余裕を見せると、相手が指摘している問題点は「想定済み」に見えます。もう検討した、終わったことだ、というふうに。さらに言えば、遅い、何をいまさら。

 笑いで、無力感に落とされる。こんなことがいつまでも続いて良いものでしょうか。