怪しいTV欄

2018.9/09

「小さなこと」こぼさぬように

 妻を亡くし、娘2人を育てている群馬県の男性。病理解剖をしても原因がわからなかった突然の死で、それ以来、家事も子育ても仕事も懸命にやってきたようです。1歳だった次女はもう小学生になりましたが、食洗機の中身だけは亡くなったその日のまま。どうしてもさわれないのだと話します。
 
 人の心は不思議だと思いました。と同時に、母が亡くなった時に片付けをしていて、まとめ買いした靴の中敷とか妙なものに悲しくなったことを思い出しました。毎日が続くつもりだった、その気持ちが潰(つい)えたことの痛ましさ。と書いても、なぜ靴の中敷や食洗機の中身なのか、なにか説明がつかない。

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 こういう人の心の不思議さは「説明がつかない」ゆえに、番組にまとめる時にこぼれてしまいがちです。でもそれが、取材がそのまま番組になっているから残る。テレビ東京の「家、ついて行ってイイですか?」の強みのひとつはそれ。今回は全国の6人についていった2時間スペシャルを見ました。

 終電後の恵比寿でスタッフの「ついて行ってもいいですか?」を受け入れた、2人の女子大生。カメラに気後れしないその1人は、アナウンサーを目指しているのだそう。実は彼女、小学生時代にアイドルグループの一員でした。けれどそれは、グループのファンである大人の男性からネットの掲示板などで、容姿などについてひどい言葉を投げつけられる日々でもあり。

 ネットでそういうことが起きているとぼんやり知っていても、目の当たりにするとあらためて恐ろしいと感じます。選挙というネーミングで人気投票が繰り返されたりする中で、ファンはアイドルとして活動する相手への評価、批評、批判を直接ぶつけることに疑問を持たなくなっているのかもしれません。でも、小学生の女の子をそんなふうに言葉で突き刺すなんて。

 最近、元アイドルのアナウンサーが増えていますが、こうした経験が彼女たちを奮い立たせるのでしょうか。

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 そして、木曽の水無(すいむ)神社で行われるみこしまくりという奇祭でスタッフが出会ったのは、30代の兄弟とその父親でした。

 王滝村で、キャンプ場と飲食店を経営しているご家族。取材は7月、3人はこの日、避難所から村が用意してくれた一軒家に移ってきたのだそう。西日本豪雨の被害で集落が孤立、ヘリで救出されていました。

 その自己紹介にスタッフも、見ている私も驚きました。「西日本豪雨」と聞いて、長野県内にも被害が及んでいるなんて想像がつかず。王滝村が提供したのは、築百年くらいはたっていそうな大きな一軒家。テレビやガスこんろも支給されています。その一方で、住んでいた集落への一本道はいつ修復されるのか、始めたばかりの事業のために借りた資金の返済は進められるのか、不安は尽きない。

 実際の被害の範囲なども含めて、大きなニュースだけを見ていてもわからないことが、具体的にこのご家族を通していろいろと伝わってきました。

 具体的なこと、小さなこと、説明できないこと、そういうことをよく見なければいけないと思わされた2時間でした。