怪しいTV欄

2018.11/04

悪気ない「正義」の過熱ぶり

 誰もが世界に向けて、情報発信者になれる。

 インターネットのはじまりには、そんな夢が語られました。この夢は、こうも言い換えられると思います。

 誰でも、正義の味方になれる。

 情報を発信することで、誰かを救う、正義が遂行されるために役立てるという夢。昔見た映画で、主人公が命の危機に何度も追い込まれながらついに、ある証拠を新聞社やらテレビ局やら国連やらに届け、世界に真実を伝えて悲惨な人々を救い、正義を実現してみせたように。

 そんな夢を見たという意識はなくても、ネット上で正義の活動をしているつもりの人はたくさんいます。自分が思う「正しいこと」を言いたい、伝えたい、広めたい。良いことをしたい。そういう人がきっとほとんどでしょう。でも。

 その「正しいこと」が正しくない場合が、ある。困ったことに、それはわりと少なくないようで。デマがたくさん出回っているのが、現状です。正義どころか、誰かを苦しめもするデマが。

 「正しいこと」かどうかの確かめ方がわからないので、確かめなかった。確かめる気がそもそもなかったけれど、これが本当なら心配だから、広めた。正しいとか正しくないとかそういう基準じゃなく、面白いから広めた。デマを広める気はなかった。

 まとめると、悪気がない。

 そりゃそうです、そもそも正義の味方になるつもりなんだから。書き込むだけで、クリックひとつで、お手軽に。

   ◇   ◇

 とまあ、そんなことをあらためて書いてみたのは、「フェイクニュース」を見たから。NHKの土曜ドラマで2週にわたって放送されました。

 北川景子演じる主人公は、大手新聞社からネットメディアに出向させられた女性記者。カップうどんに青虫が入ってた、というツイートが拡散されていて、それを嘘(うそ)ではないかと疑うところから物語が動きだします。前後編100分に、要素がぎっしり。

 より多くの人の目にふれることばかりを競う一方、コストのかかる自前の取材を避けがちなネットニュース。企業のミスに向けられる、ネット上での「正義の行動」の過熱ぶり。悪役と認知されれば、有志たちによって個人情報がどんどんさらされ、その糾弾は実生活を脅かしていく。そして、嘘だったことをツイートやニュースの発信側が認めたところで、その訂正ツイートはなかなか広まらない。

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 こうしたネットの「真実と嘘」をめぐる現状を描きながら、取材活動でのセクハラ、企業の吸収や提携、スーパーやコンビニで販売されているプライベートブランド商品の作られ方、などにも目を配りつつ、さらには、ネット上での個人への批判によく使われる「反日」という言葉に対して、日本人としての出自を証明してみせることは差別への加担なのだと、鋭利な指摘も。

 デマの被害者が象徴しているように、人を孤立に追い込む方向に進む今の社会へ向け、共闘という選択肢を熱く提示するドラマになっていました。

 そう簡単に、正義の味方になんかなれない。でも間違えるのは、簡単。そんな当たり前のことをわかっておかないといけないようです。