怪しいTV欄

2018.11/18

ロス暴動から26年 トライは続く...

 ハロウィーン直前の週末の渋谷の騒ぎ。軽トラックが倒される映像が繰り返し放送され、不安に駆られた人は少なくないでしょう。暴動は他の国、別の社会の出来事だと言い切ることは難しい、そんな現実を目にしてしまったのですから。

 そう感じたタイミングで、NHKBSプレミアムの「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」で放送された、「ロサンゼルス暴動 その時...~炎上する街に響いた奇跡のスピーチ~」の回を見ました。

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 近年の大きな騒動、偉業に関わる人物に着目したドキュメンタリー。今回は、暴動の始まりを撮影していた人、暴動の現場からケガ人を救出した人、そして暴動の引き金となった裁判の当事者であるロドニー・キングさんを取材した、三つのブロックから構成されています。3人とも黒人男性で、みなロサンゼルスの一般的な住民でした。

 今から26年前。複数の白人警官が、スピード違反などで逮捕したロドニーさんを暴行、瀕死(ひんし)の重傷を負わせます。その映像が報道されたにもかかわらず、警官たちには無罪判決が下りました。これによって、ロサンゼルス市警の黒人住民への対応や暴力に対する不満が爆発し、死者63人、負傷者2383人に及ぶ6日間の暴動へ。

 いったい、現場ではどんなことが起きていたのか。暴動の経緯だけでなく、トランプ米大統領が人種間の対立を煽(あお)るような言動を重ねている現状からも、そしてネットでの動画の拡散や共有が始まる前に起きた、一般の人が撮影した映像がきっかけとなった事件としても、あらためて知りたいことがたくさん。

 判決を知ってビデオカメラを持ち、暴動の発火点となる通りに出かけた人。彼のカメラは、石を投げてきた少年を警官が逮捕しようとしたことから暴力が沸騰していく過程をとらえていました。警官が悪い、もめ事になって当然と思っていたこの男性ですが、通りかかったトラックの運転手の白人男性を引きずり降ろし、殺してもいいとばかりに殴る人々を見て、この様子を伝えなければと映像を報道の手に渡します。

 テレビのヘリ中継で運転手への暴行を見た近所の男性は、助けなければと現場へ。同じような思いで集まった人と協力し、さらなる暴力を加えている様子を装い、救出に成功します。

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 一方、現場の映像を撮った人は、近隣の人たちに特定されてしまい、脅迫を受け、街を離れていました。また、最初に警官暴行の現場を撮った白人男性も、警官の行為を告発したと非難され、脅しを受けたそうです。

 そして、ロドニーさん本人。暴動の収束に、声を震わせとつとつと自分の言葉で訴えた彼のスピーチが貢献しますが、その後の人生は明るくなく。敏腕弁護士が喜々として腕を振るい、市から高額の賠償金を得たものの、その大金で道を踏み外してしまいます。酒と薬物の過剰摂取で若くして亡くなることに。

 そんな彼のスピーチから番組は、「仲良くできないのでしょうか?」という部分を強調していましたが、26年後の今の状況を踏まえて響くのは、「今はこんなだけど、一緒にトライしよう。打ち破ろう、一緒にやってほしい」の部分。トライはずっと続く、のだと思います。