怪しいTV欄

2019.5/05

平成、真実ねじ曲げた政治の軽さ

 続々と放送された、平成振り返り番組。「平成を」と言いつつ、いずれの番組も西暦での表記なしには見る人の記憶を呼び起こせないことが、最も端的にこのテーマを語っているように思えました。

 「NHKスペシャル」枠で放送されたのは、「平成史スクープドキュメント」というシリーズ。「スクープ」とは大胆な、と思いましたがその第7回、「自衛隊 変貌の30年~幹部たちの告白~」は、そう構えるに足る内容でした。

   ◆     ◆

 平成16(2004)年からの、陸上自衛隊のイラク派遣。結果として、一人の犠牲者も出すことなく終えたその活動において、「R」と呼ばれる計画の内部資料を番組が入手。

 そこでは、隊員の戦死が想定されていました。「非戦闘地域」へ派遣されたはずなのに。

 多くの人が記憶に残っているであろう、当時の小泉純一郎総理の国会答弁を番組は振り返ります。「非戦闘地域とする根拠は」と問われると、「根拠と言えば、戦闘が行われていないということです。だからこそ非戦闘地域」。

 最後は少し笑いを含みさえして、「非戦闘地域」の説明をしただけで、答えを避けたのです。戦闘地域には行かないと法律が定めている自衛隊が行くのだから、そこは戦闘地域ではない、という論理のもてあそび。派遣は実現されました。

 その論を借りて言えば、非戦闘地域で、人は戦死することができません。ですから、戦死を想定した内部資料の存在は、「非戦闘地域である」という判断を真っ向から否定するものと言えます。

 政府が言うところの非戦闘地域で半年間、イラク復興業務支援隊長として現地で任務にあたった田浦正人陸将。その半年間に宿営地には7回もの攻撃があったそうです。取材に応じた田浦陸将は、政治の決定に従って任務を行う以上、その説明と矛盾しない結果が求められると強く感じていたと振り返ります。

 「私どもは国のやりたいことを具現化する装置だというふうに思ってますので、そこはなりきってやるしかない」。生死を懸けて、装置になる。自衛隊に、それを望んでいるのは誰なんでしょうか。

   ◆     ◆

 ここで言われている「国のやりたいこと」は、「政府が望むこと」でありつつ、「国民の望むこと」であるべきですが、果たしてそうでしょうか。戦死が想定されていたことも、国民には知らされていません。南スーダンPKO活動の日報は、隠蔽(いんぺい)されてしまいました。

 「具現化する装置」という言葉には、前回取り上げた、森友事件で文書の改ざん作業を行い、自殺した近畿財務局の職員を思い出さずにいられません。

 政治の言葉が軽くなった、とよく言われます。平成を振り返るとそれは、政権を運営する人の論理や言葉のもてあそびが、明確に批判や否定をされずに放置され、既成事実になってしまうことでした。そして、その「つくられた既成事実」に合わせて、真実は隠され、ねじ曲げられさえする。

 元号が変わったくらいで、その流れは変わるでしょうか。元号には関係なく、変わるべきと強く願うのですが。