怪しいTV欄

2019.6/30

「より人道的に」騙して次の戦争に

 トランプ米大統領は結局のところ商売人だから、新たに戦争を始めたりはしない。と、まことしやかに言う人たちがいますが、損得をどうとらえるかはそう単純な話でもないように思います。

 再放送されたNHKBS1スペシャルの「なぜ日本は焼き尽くされたのか~米空軍幹部が語った"真相″」を見ました。敗色濃厚な日本へ、なぜ米軍は空爆を続けたのか。無差別攻撃で40万人もの犠牲を出しながら、当の日本で時に誇らしげに言われることさえある、「日本がなかなか降伏しなかったから」だけが理由なのか。

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 番組が得たのは、戦争当時の空軍将校246人が現場を振り返った肉声テープ。収録は1960年代、半世紀ぶりに発見されたそれには「軍の内輪事情」が赤裸々に語られていました。

 空軍、と書きましたが、当時は陸軍の下部組織で、物資の輸送や偵察で支援的な役割しか得ておらず。軍用機の保有数においては世界6位。ドイツの6分の1以下。トップにいたアーノルド司令官にとって「空軍の独立」が悲願でした。開戦すると、「素晴らしいチャンスが来た」。

 頭にあったのは、師ウィリアム・ミッチェルの教え。「陸海軍の下にある空軍など、ろうそく工場に電灯をたのむようなものだ」と空軍の独立を主張し、それゆえに失脚。彼は、軍用機の保有数で世界2位だった日本による真珠湾攻撃を予想していました。

 開戦すると、統合参謀本部が設置され、アーノルド司令官も席を得ますが、陸海軍の幹部に軽んじられ、55歳にして「空軍の坊や」とあしらわれる始末。戦況が明らかに有利になり、陸軍と海軍、どちらが先に上陸するかを競う状況になると、「空軍だけの力で戦争を終わらせてやる」との意志は強固になっていきます。

 失敗も追い打ちをかけます。大統領から以前の100倍の予算を獲得し、軍用機の開発に莫大(ばくだい)な費用を投入。B29が完成しますが、超高高度1万メートルからの攻撃は無敵なはずが、当時はまだ誰も体験したことがなかったジェット気流に阻まれます。

 ドイツや日本のような非人道的な戦いはしない、という名目のもと、兵器工場などをピンポイントで爆撃する「精密爆撃」を成功させるはずでした。しかし、狙った武蔵野の中島飛行機工場を爆撃できない。ついには、海軍の小型機に先んじて成功されてしまう。

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 そんな中、新たに現場のトップに抜擢(ばってき)されたのが、カーチス・ルメイ将軍。仕事を続けられない父のもとで貧困に苦しみ、失敗を恐れていました。空軍力で戦争を終わらせるにはどうするか。「私の首がかかっていた」と振り返る彼は、アーノルド司令官から決定的な命令はなくとも事態を察して、焼夷(しょうい)弾を使っての都市への空爆、つまり無差別攻撃を決断しました。

 果たして空軍は力を示し、悲願の空軍独立は実現。しかし、精密爆撃の失敗は今も続き、「誤爆」のニュースは絶えません。番組の最後に歴史家が語ります。「より早く、より人道的に戦争を終えられる」と騙(だま)して次の戦争が始まる、その繰り返しなのだと。