怪しいTV欄

2019.11/03

五輪の「面白さ」大河でどう描く

 今日放送されるNHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)」第41回。個人会社の申告漏れを指摘されたチュートリアルの徳井義実の出演シーンを削るなどして放送することが発表されました。徳井が演じたのは、1964年東京五輪女子バレーボール日本代表の大松博文監督です。

 すでに修正申告などを済ませ追徴課税も納めています。しかしながらNHKの判断は、ドラマのすべての撮影が終了している状況で、「流れを損なわない範囲で対応可能な措置を講じて」放送するというものでした。

 結果、今日の放送はいくらか視聴率が上がることになりそうです。「措置」はどんなものか、気になりますから。

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 それにしても今回の大河ドラマについては、視聴率が振るわないことへの批判記事が随分と多いように見受けられます。あまり盛り上がっていない、のだとしたら、その理由は何でしょう。感想として各所に散見できるのは「大河ドラマでは、もっと古い時代の話を見たい」「展開が速すぎる」が代表的なところのようです。

 大河ドラマを見た経験がそもそもあまりない私ですが、「いだてん」については1940年の幻の東京五輪、その返上の経緯がどう描かれるかをずっと楽しみにしていました。その返上と戦争、そして戦後のあらためての招致が成功するまでが放送されたのは10月に入ってから。

 まず、面白かった。

 確かに、展開はかなり速いです。しかも、学校ではほとんど教えられていない昭和の前半が描かれるので、落ちこぼれる人が出るのはわからなくもありません。でもほとんどの人にとって、普段の生活で、家族や年長者の話にいくらでも手がかりがある、身近な過去でもあり。

 先週放送の第40回では、招致成功の経緯を描いて、「アジア各地でひどいこと、むごいことをしてきた俺たち日本人は、面白いことやんなきゃいけないんだよ」というセリフが物語の核となっていました。脚本の宮藤官九郎が選んだのは、五輪の素晴らしさとしてよく挙がる、平和、正義、美しさではなく、「面白いこと」。

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 この脚本家が書いたドラマや映画、演劇を見てきて私は、心地よいとは言えない事象を物語の中でよいものに転生させる、そのことが神髄なのだと感じています。例えば、人前で過剰にいちゃつくカップルの迷惑な振る舞いを「ひどいなあ」と思わせるところまでとことん描いて、でもそこからただならぬ愛情の素晴らしさで圧倒してくる、というような。

 来年の東京五輪については、招致が成功した当初からさまざまな反対意見が出ています。このドラマは、そういう意見の側にも軸足を置いている。そこから、「でも」を描こうとしているのだと思っています。

 その意味では、一部の競技が札幌開催になり、混乱が深まり批判の声が大きくなってきたこれからが、このドラマの本領発揮なのかもしれません。

 第39回では敗戦の前後を描き、「日本は貧しくなった」というセリフが今の社会に強く響いてきました。そこから、どうやって宮藤脚本らしい「でも」が描かれるのか、楽しみです。