怪しいTV欄

2019.11/17

「桜を見る会」を全部見た

 「安倍総理主催の『桜を見る会』を全部見る」。ツイッターの「テレ東NEWS」のアカウントにそんなタイトルがあがったのは、14日の午後4時でした。

 それは来年の「桜を見る会」の開催中止が発表され、安倍総理が「私の判断で中止した」と記者団に述べた、翌日。ツイートはこう続きます。「今年4月に開催された『桜を見る会』...テレビ東京と代表カメラが撮影した約1時間20分の映像を全てアップしました。会場の〝雰囲気〟をご覧ください」、そしてYouTubeへのリンクが貼られています。

 その手があったか! 映像素材の正しい活用法とその判断の早さに、思わず唸(うな)りました。

 これから、この件についてはさまざまな説明や弁明がなされるでしょう。異論も嘘(うそ)の情報も飛び交うでしょう。ならば、全部をご自分たちで見てください、というわけです。さっそく見てみました。

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 新宿御苑の桜に降り注ぐ、穏やかな日差し。たくさんの人々。会場に登場した安倍総理に、いっせいにスマホなどをかかげます。その様子は、見物客に見えて、各界の功労者がそれを誇りに集っていると想像するのは難しい。

 そして、これまたたくさんの芸能人、有名人。テレビで見る顔も多い一方、テレビが仕事の主戦場のはずなのに最近見かけない人の顔もかなりあって。

 「桜を見る会」はワイドショーや情報番組で毎年、取り上げられます。私の記憶では以前はそう長い時間が割かれることもなく、特にスポーツ選手などの珍しい晴れ着姿を紹介するのが目的のようにさえ思えました。主催の総理は、後ろ頭で何度か画面に登場するぐらいだったことも。

 しかし、小泉元総理の頃、総理の登場が増えるようになり。今回の映像を見ると、安倍総理は盛んにカメラに向かって芸能人や有名人とからんだポーズをとってみせています。

 そして、開会。安倍総理はあいさつの冒頭でまもなく、「山口さんや皆さんと共に政権を奪還してから、7回目の桜を見る会となりました」と。びっくりしました。これが、政権を奪還したお仲間の集いだったとは。

 地元の後援者を多数招くなど、これは公的行事の私物化ではないか、公職選挙法違反ではないか。指摘のはじまりは5月、国会での共産党の宮本徹議員の質問でしたが、資料の提出を求められた日と同じ日に招待者名簿を破棄したと内閣府は明らかにしています。

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 テレ東の「全部見る」を見ると、お呼ばれした皆さんはとてもうれしそう。自慢できることなのでしょう。報道によれば、美味(おい)しいものも食べたそうで。

 支持をすると得をする。現政権のこれまでを振り返ると、そういうイメージづくりに成功してきたと私には思えます。利益誘導が疑われる案件が問われるたび、支持が大きく減るどころかむしろ、「そうか、支持すると得するんだ」と思う人を増やしてきさえしたのではないか。たいへん身近なお得が見えた今回の件で、「私もやっぱり支持して得をしたいなあ」という考えを変えない人が多いなら、ここはそういう社会なのだと確信を持つしかありません。