怪しいTV欄

2020.1/12

自衛隊、知らないまま送り出す

 正月気分が吹っ飛ぶのが、本当に早い年明けでした。3日には、トランプ大統領の命令により米軍が、イランのソレイマニ司令官を空爆で殺害し、世界に強い緊張が走りました。

 正月のテレビは生放送が少ないので、入ってくるニュースと現状のギャップも目についてしまいます。そんなテレビと最も親和していたのは、6日の年頭記者会見までしっかりお休みをとっていた安倍総理でしょう。

 年末の27日に中東海域に海上自衛隊を派遣することを閣議決定しておきながら、まさにその地で起きた新たな戦闘について、6日まで何の発言もありませんでした。その後は、7日に中東3カ国歴訪を発表すると、翌日には延期の方向が伝えられ、そのまた翌日に予定通りの実施へ、とまさに右往左往。

 年頭会見で「新しい時代の日本外交の地平を切り開く」と発言しましたが、安倍総理にとってその最も大事な一歩は自衛隊派遣を実現すること。会見までの沈黙は、10日に河野防衛大臣が派遣命令を出してしまうまでできるだけじっとしていようという考えだったからとしか。

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 それなのに、直前で右往左往してしまった。とても親しいはずのトランプ大統領から重要視されているのなら、事前に情報を得ることができ、こんな混乱を見せずに済んだでしょうが、親しいというのはトランプ大統領とツイッターで相互フォローになっている程度のことなのかもしれません。と思ったので確認してみたところ、安倍総理のアカウントはフォローされていませんでしたが。

 そのトランプ大統領は、全米にテレビ中継された9日(現地時間8日)の演説で、戦争に向けてさらに踏み込むようなことはしない、との方針を示しました。が、この演説以外、ほとんどの発言はツイッターから。空爆の際には、星条旗の画像を、そして「イランは戦争に勝ったことはないが、交渉で負けたことはない!」と「!」付きでツイートしたり。

 アメリカの、米軍の最高責任者が、私たちが「このお菓子美味(おい)しかった!」とつぶやくのと同じ調子で空爆を、殺害を語るなんて。これは現実なのかと、強く戸惑います。

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 自衛隊派遣が国会で議論されず、閣議決定で決められたことも、最初の報道を目にした時は信じられませんでした。

 昨年の本欄ではNHKスペシャル枠で放送された「平成史スクープドキュメント」のシリーズから、自衛隊の回を取り上げています。2004年からの陸上自衛隊によるイラク派遣について、計画の内部資料を番組が入手すると、そこでは、戦死が想定されていました。当時の小泉総理が国会で「非戦闘地域とする根拠は」と問われ、「根拠と言えば、戦闘が行われていないということです。だからこそ非戦闘地域」と最後はうっすら半笑いで答弁し、「非戦闘地域」へ派遣されたはずなのに。

 今回の派遣は調査研究のための情報収集が目的です。安全確保に万全を期すと政府は説明します。自衛隊では今回、どんな準備がされているのでしょうか。隊員に、または彼らによって現地の誰かに死がもたらされたとき、どのような対応をとる計画なのでしょうか。私たちは知らないまま、送り出すのです。