怪しいTV欄

2020.7/12

「やってる感」に漂う不快感の源泉

 「選挙対策に余念がない」と5月に本欄で書いた、小池百合子都知事が再選。新型コロナウイルスの感染状況についての連日の会見を見てそう感じたんですが、まさか告示後も会見以外の選挙活動をほぼやらない、とまでは予想できず。

 都民に情報を伝えるための会見を「私、やってます」を都合よくアピールする場に、そして演説も討論会への参加も最小限。やってる感も、ひきこもることでコロナ対応できてる感も醸し出しつつ、活動費も節約し、失言の多いこの人にとっては同時に失言予防策にもなるという、一石数鳥の選挙となりました。

 その戦略にまんまと乗せられてきたテレビの報道は、投票の締め切り直後に当確を打ち、ご本人も調子に乗ったんでしょう、テレビ東京の都知事選の速報番組で池上彰の「4年間の任期を全うされると約束されますか?」という質問に、答えをはぐらかしてニヤリ。

 「珍しく正直だな」なんて思ってしまいました。だって小池都知事には、前言の翻しも、録画されている発言を「言ってない」と言い張るのも当たり前ですから。
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 あとは、どのタイミングで都政を捨てるのか。希望の党結成のような、すったもんだをまたやらかすのか。

 ならばと、話題のノンフィクション「女帝 小池百合子」を今ごろやっと読んでみました。

 政界入りする前の小池は、フリーアナウンサーっぽいタレント。今でこそ多くいますが、当時は珍しい存在でした。知識人、財界人と呼ばれるような、地位の高い中高年男性の隣で、知的なムードを漂わせつつお行儀よく話を伺うのが仕事。そこから経済情報番組、ニュース番組のキャスターへ。著者の石井妙子は、当時の彼女の看板だった「芦屋のお嬢さま」「カイロ大を首席で卒業」の実態を、当時を知る人たちに取材し、探ってゆきます。

 キャスターとして、地位の高い中高年男性にさらに人脈を広げ、「海外通」「中東通」というイメージを身につけると、政界へ。そこからこの本は、細川護熙を筆頭に、平成の人気政治家キャラ盛衰記の様相を呈してきます。死屍(しし)累々。そして小池が残った。

 歓迎されずとも、もめ事を発生させ、それに勝つことで、次の居場所をつくってきた過去を振り返ると、前回の都知事選で石原慎太郎が彼女に言った「大年増の厚化粧」が、どれほどの武器をもたらしたかに気づかされます。被害者の立場が共感を誘い、今回も多くの女性票を獲得しました。
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 この本で興味深かったのは、小池都知事が20歳前からダジャレや性的な冗談を好んで口にしていたという証言です。いわゆるオヤジギャグ。「面白いでしょ」と押し付けてきて、仕方なく笑おうものならたちまち共犯にさせられてしまう、アレです。

 エジプトの駐在員、記者、政府関係者などがつくる濃厚な男性社会を生き抜くために役立った処世術なのでしょうが、最近の彼女が繰り出すキャッチコピーや、ライトアップなどの珍妙なキャンペーンが漂わす不快感はコレだったのかと合点がいきました。中身のないオヤジギャグのような政策。もはや全然笑えない。