怪しいTV欄

2021.7/02

「忠誠」に酔っている気味悪さ

 報道やドキュメンタリーの番組が、ネットの配信でも見られるようになってきました。

 テレビ朝日で日曜の早朝4時台に放送されている「テレメンタリー2021」は、過去の放送回をユーチューブの公式チャンネルで見ることができます。最近のオススメは「民意偽造~軽んじられた〝名前〟」、愛知県知事のリコール(解職請求)運動を取材した地元メーテレ制作のドキュメントです。

 リコール運動の実務を取り仕切っていて、署名を偽造した地方自治法違反の疑いで逮捕された、田中孝博事務局長に密着取材。「警察につけられている」という告白があり、ドアを開けたら「警察です」と名乗られる様子が部屋の側から撮れている。興味をそそるオープニングです。

 始まりは、昨年の8月。愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の展示内容について、河村たかし名古屋市長が「日本人の心を踏みにじるもの」と糾弾。芸術祭実行委員会の会長である大村秀章知事の責任を問うべきだと、河村市長らが「愛知100万人リコールの会」を立ち上げ、会長に着任したのは、CMでもおなじみの美容クリニックの、高須克弥院長でした。

 このリコールには、有権者86万5千人以上の署名が必要。活動を取り仕切った田中事務局長は、30代で県議を2期つとめた後、2回落選。最初は大村知事、次は河村市長の応援を受けていました。

 田中事務局長が「先生の部下として仕事ができる」と心酔していた、高須「リコールの会」会長は、「署名が積み上がっている!」と順調ぶりをツイッターで公言していましたが、10月下旬の期限に提出された署名は44万人弱。河村市長は「十分な内容だった」、大村知事は「へんな感じがしますね」。そして田中事務局長はといえばこの時、日本維新の会愛知5区の支部長の任を受け、衆院選出馬へ動き出していました。

 しかしこの後、署名の偽造が発覚。「何の関係もありません」という高須会長のコメントの後に、目元が潤んで見える田中事務局長のアップを添える編集が面白い。ついに選挙管理委員会が、刑事告発。署名は積み上がらずとも、証拠は積み上がっていました。

 維新の会支部長を辞任した田中事務局長は「高須新党をつくらなきゃ」「高須会長に恥をかかせるわけにはいかない」と言っていたのですが、さて。

 家族との思い出がある伊豆への旅に、取材陣が同行。窓から海を眺めて田中事務局長が「名古屋はあっち」と指さしたところで、ノックの音が。「警察です」。警察の指示で退出するカメラに、「ありがとうございました」。

 高須「会長」も河村市長も、偽造には無関係と主張したのは既報の通り。田中事務局長の「間違えたかな、俺」というつぶやきで締める編集で、番組は最後まで楽しませつつも、なかなかにゾッとさせてくれました。

 対立をつくって注目を集めよう支持者を増やそう、とたくらむ者。親分を見つけて政治家という職にありつこう、と狙う者。対象は違っていながらも、どちらも自身の「忠誠」に酔っていることが、実に気味が悪い。