怪しいTV欄

2021.10/08

面白がり方は自分で見つける世代

 視聴率の基準が変わること。番組を作る現場にとってそれは、ここ数年の最も大きな事件の一つでした。

 世帯の視聴率から、個人の視聴率へ。その個人視聴率をどう扱うかはまだ、テレビ局によってバラツキがありますし、表には発表されない数字です。大まかには、4歳もしくは13歳から、49歳もしくは59歳までの人たちにどのくらい見られているか、が番組の「成績」の新しい基準になりました。

 今年に入って、若い視聴者が好むと思われるお笑い番組、子ども向けのゲーム形式の番組が続々と始まる一方、長く続いていた番組がいくつか終了しました。出演者の若返りも図られ、20代の芸人やYouTuber(ユーチューバー)の出演が増えました。

 結果としてお笑い番組が過当競争になるなかで、日本テレビ・TSBで4月から始まった「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」の好成績が注目されています。「オモてなしすぎでオモしろいウマい店」を探して取材する、という番組タイトルや企画趣旨からして若い層に向けた感じは特にありません。レギュラー出演者はヒロミと、バイきんぐの小峠英二。50代と40代です。取材される店の人たちも、中高年が多い。

 ですが、春の新番組では最も順調に成績を伸ばし、13歳から49歳の、テレビ業界が欲しがっている「コアターゲット」の視聴率がちゃんと高い。

 取材する店の基準は「びっくりな店」、つまりはびっくりするほど安い店。そこには過剰なサービスを選択してしまう、当たり前じゃない面白い人たちがいるというわけです。でも、それだけでは、夕方のニュース番組の特集企画と似た内容になりかねません。

 まずこの番組、ナレーションがほとんどない。振り返れば、90年代からのバラエティーはナレーション主導でした。編集で笑わせどころを細かく演出し、ナレーションでそこへ引っ張り込む、というような。作り手の思いや考えを憑依させるかたちで、ツッコミ役、面白がり方の解説役を担っていたわけです。そうした役割は、テロップが担う場合も多くあり、画面にひしめいてもいました。

 この番組はそれらをできるだけなくして、スタジオで取材VTRを見る出演者たちの反応に任せます。視聴者としては、出演者と一緒に面白がるポイントを見つけていくような気分に。

 どうやらそこが支持されているんじゃないか。YouTube(ユーチューブ)などネットの動画で育った若者には視聴者を思い通りに誘導するよう、バラエティーが積み上げてきた手法が鬱陶しい。良くも悪くもプロの手が入っていない動画もたくさん見てきた彼らは、自分で面白がり方を見つけたい。そういうことなのかもしれません。

 お店を密着取材するスタッフとの情深い交流ドキュメントも、この番組の見どころです。これまでも現場でそういう出来事は起きていたけれど、内輪の話や裏話に収めていました。

 顔を見せない作り手が誘導するのではなく、作り手も画面に出てきて、ウォッチングされる側にさえなって、それをまるごと楽しんでもらう。想定されていなかったネットの影響であり、若い世代の好みの変化、テレビの楽しみ方の変化を感じます。