怪しいTV欄

2021.11/05

面白い選挙特番があったなら

 困りました。

 選挙の後には選挙特番を取り上げるのが本欄の恒例だったのですが。準備期間が短かった、コロナ対策をとっての取材で思うように動けない側面があったとはいえ、新しい試みはほとんどありませんでした。

 各局に中継で出演する候補者や党の上層部も出方を心得ていて、少々の痛い質問には表情を崩すことはなく。失態がずっとネットに残ることがわかり、対策を練って臨んでいるのでしょう。

 むしろ、踏み外していたのはタレントでした。TBSが「選挙の日2021 太田光と問う!私たちのミライ!」とタイトルに冠付きで迎えた、爆笑問題の太田光。

 「空気を読まないで暴れ、時に真理を突いちゃう子ども」が長らく彼の自己認識と思いますが、大型特番に派手に迎えられ中央に座すと、「権力を振り回して好き勝手をするおじいさん」に見えてしまいます。つまりは番組での立場が、政界での二階俊博元自民党幹事長や甘利明前幹事長と同じなのに、彼らに引導を渡す発言をしてみても快哉の声を得ることは難しい。果たしてご本人、気づいているのか。

 山本太郎れいわ新選組代表とのやりとりが終わった瞬間、「あいつ態度悪いね」と捨てぜりふをこぼすのを見て、気づいてないわけではないがどうしたらいいかわからない、身動きがとれない苦しさを感じ取ってしまいました。

 そして同時に、この人ひとりの問題ではないのだとも思いました。ニュースでは国会の質疑も端折られてほとんど放送されない今、テレビの中での政治家はただの人気商売のように見えています。政権や与党は以前よりも権力を自在に使えているのに、権威を感じさせる存在には見えていない。昨今の「政治は難しい」はそこに、安易には立ち入り難い尊さを見ての言葉ではなく、「興味ない」のそつのない言い換えでしかでしかありません。

 だから、タレントや芸人が政治家の持ち場に踏み込んでみたところでそれが視聴者には、大胆にも無謀にも映らない。ショックもギャップもない。快哉が上がらないのも当然なのです。

 付け加えると、かつての池上彰に快哉が上がったのは、NHK出身の地味で真面目そうなおじさんが斬り込んだからです。今や「池上彰の総選挙ライブ」(テレビ東京系)のPRで彼を「池上無双」と呼んで持ち上げてしまうようになり、そこにショックやギャップはなくなってしまいました。

 選挙特番の失速は、今以上に選挙への関心を冷え込ませ、投票率を下げかねません。本音では横並び特番からいち抜けたしたいテレビ局もあるかもしれませんが、報道機関の看板を掲げて選挙報道から降りるのはさすがに無理なこと。ではどうするか。

 愚直ながら、ふだんからの取材を蓄積するしかないのでは。その予算を得るためにも蓄積の場としても、レギュラー枠を持つ必要がある。活気ある放送にできていたTBSラジオの選挙特番を聞いて、あらためてそう思いました。レギュラーの政治番組という基盤を持てば、実の詰まった選挙特番を作れる。面白い選挙特番は、投票者を増やすかもしれない。投票する人が増えれば、選挙特番の視聴率も上がる。珍しく、夢を語ってしまいました。