怪しいTV欄

2022.1/07

リモコンに例のボタン 視聴の枠組み変える

 テレビにとって特別な年になるだろう2022年が始まりました。年末年始にテレビを見ていた方は、動画配信サービス各社のCMに繰り返し遭遇したのではないでしょうか。総合するとそれはもうたいへんな出稿量でした。

 テレビのリモコンに、初めてネットフリックスの専用ボタンが搭載されたのが2015年。一部の機種に限られていましたし、多くの世帯へ導入されていくのには時間がかかりました。買い替えの時期が来て、テレビを選ぼうとして専用ボタンが搭載されていることを知り、選んだ機種についている専用ボタンを使えば設定の手間が省けるからと新たに配信サービスを試すようになる。そういう順序が一般的ですから、当然でしょう。

 定額制動画配信サービスの市場規模が一層の急拡大を遂げたのは、一昨年から昨年にかけてだそうです。コロナ禍で在宅時間が長くなったこととともに、東京五輪が思い浮かびます。

 前回の東京五輪は、テレビの普及や買い替えの起爆剤となりました。カラー放送、アメリカに映像を送っての国際中継、そして競技のスロー再生もこの時から。以来、家電量販店では五輪開催の度に、より大型で高機能なテレビへの買い替えを激しく売り込むようになっています。新製品もこの時期を狙って準備されるのが、恒例に。今回は海外開催の五輪以上に大量の買い替えが期待されていたところへ、コロナ禍も相まった結果、多くの人が新しいテレビを入手したはずです。そして最新の高機能なテレビには、例の専用ボタンがついている。

 実は昨秋、例年なら寒くなったらテレビの前に戻ってくるはずの視聴者が戻ってこないことが、業界で話題になっていました。緊急事態宣言が明けたものの、またいつ感染者が増え出すかわからない状況にあって、今のうちに出かける人、飲み歩く人が増えているのかもしれないという見立てもありました。そんな理由であってほしい、という願いもそこには含まれるかもしれません。

 長年テレビにとって追い風になってきたはずの五輪。でも今回は、専用ボタンを多くの世帯へ運ぶことでテレビへの逆風を強くさせたと言えるのではないでしょうか。

 年明けから、NHK紅白歌合戦の視聴率が振るわなかったことがニュースになっています。この結果については、近年ライバルとしての存在感を大きくしていた日本テレビの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけない」シリーズが放送されなかった影響が小さくないと言われています。二つの番組を行き来して見る、ザッピング試聴ができなくなってしまったから。確かに「笑ってはいけない」は、出入りしつつ見てもらうための工夫を極めた番組でした。

 しかし、五輪後初めての紅白歌合戦であることにも注目すべきでしょう。例のボタンがありますから、ザッピング視聴の枠組みももう以前とは違うわけです。動画配信においては、スマートフォンよりテレビを使った視聴の方が視聴時間が長い、というデータもあるとか。

 ネットかテレビか、という対立項では網羅しきれない新たな状況が始まっています。今年もどうぞ本欄をよろしくお願いいたします。