信濃製菓―長野市若穂

野沢菜

幅7.0㎝x厚さ4.0㎝ 88g 野沢菜塩漬け (醤油、砂糖、みりん、サラダ油、粉末だし、七味唐辛子)

丸なす

幅7.5㎝x厚さ3.0㎝ 113g 丸ナス(味噌、砂糖、サラダ油、粉末だし)

あんこ

幅7.3㎝x厚さ3.0㎝ 88g  小豆粒あん(砂糖、塩)

 「中学2年の時に大好きなじいちゃんが亡くなって、『俺がこの店の後を継ぐまで、親父頼むよ』って親父に中継ぎを頼んだんだ」
 専務の小宮山幸広さんは、忙しい共働きの両親に代わって、祖父母に可愛がられて育った大のおじいちゃん子。そのおじいちゃんが信濃製菓の初代小宮山喜六さんです。
 12歳から群馬の和菓子屋で修行をした喜六さんは、昭和30年代前半に故郷に戻って和菓子職人に。昭和37年に和菓子卸専門店、信濃製菓を創業しました。和菓子が売れない夏場におやきを作り始めますが、当時おやきは家庭で作るもの。当初はまったく売れなかったといいます。ようやくおやきが売れるようになった頃、喜六さんは77歳で他界します。
 14歳の少年はその時、既に自分の将来を決めていました。「じいちゃん、ばあちゃんがやってきたことを残したかった。それだけのこと」。いつも一番近くで祖父母の苦労を見ていた幸広さんだからこそです。
 幸広さんの頼みを聞いた父の忠義さんは、建設会社勤務と掛け持ちで、信濃製菓の社長に就任。朝一番でおやきをセイロにかけて蒸かし上げ、出社してきたスタッフにバトンタッチして会社へ向かう、という毎日をこなしてきました。一方の幸広さんは大学卒業後、1年半のアメリカ留学を経て帰国、「修行を兼ねて」量販店に勤務。最初から5年と決めて、きっちり勤め上げた後、信濃製菓の専務として実家に入ります。
 社長は今も"二足のわらじ"の忠義さんが務めていて、早朝の作業も続けています。実質経営者の役割を担うのは幸広さんで、「困ったら相談できるので助かってます。社長は壊れた機械もメーカーを呼ばずに直しちゃったりするアイデアマン。おやきについては食べる方が専門かな」。
 卸専門店でスタートした信濃製菓が、実店舗を出したのは平成7年。今では実店舗での売り上げが、卸売りや地方発送を押さえて一番多くなりました。
 「2軒に持っていきたいから、別々に包んで」「冷凍おやきください」「え~っ、にらせんべい終わっちゃったの?楽しみに来たのに」などなど、常連さんが入れ替わり立ち替わり来店。店員さんとの気さくなやり取りも売り物で、しっかり地元に根付いた"普段使い"のおやき屋になりました。
 信濃製菓の定番おやきは、丸なす・野菜ミックス・野沢菜・きのこミックス・にら・小倉・そら豆・かぼちゃ・切干大根の9種類。生地のベースは薄力粉にもち粉、ベーキングパウダーと砂糖ですが、具によって生地を変える細やかさ。「丸なす」には膨らみを抑える生地、「野菜ミックス」には少し甘め、「小倉」などの甘味おやきには上新粉を加えて膨らみを増す生地など、4種類の生地を使い分けているそうです。
 一番のおすすめはやっぱり「丸なす」。「昔ながらのものは残したいし、この味をきちんと伝えていきたいから」と幸広さん。おやきはすべて自社で仕込んで味付けをするのがこだわりで、初代喜六さんの時代から伝わる味付けも、工場のスタッフ全員で味見をしているそうです。
 14人いるスタッフは、野菜を仕込む、生地を練る、おやきを包む、おやきを蒸かす、発送をするなど持ち場が決まっています。それぞれがテキパキと仕事をこなしているのは見ていて気持ちがいいほど。それでも人手が足りないのは、数年前からインターネットで販売を始めた「石臼挽き信州地粉おやき」が大人気だからです。店頭では冷凍販売のみで、ネット販売が中心の商品ですが「ボリューム満点1・4倍」の謳い文句通り、その大きさに全国からファンが殺到。幸広さん自らアイデアがひらめいたという特大おやき、食べてみると確かにボリューム満点、石臼挽きのせいかモチモチとした歯ごたえも魅力です。

 実は幸広さんにはもうひとつの顔があります。小学2年生から始めた柔道は、体育大学を経てアメリカでも指導していた経験の持ち主。今は「若穂柔剣道育成会柔道部」で指導しています。「おやきと柔道と2本立てだからね。結構忙しいよ。子供たちに教えるだけじゃなくて、大会に連れて行ったり、自分自身も審判のライセンス講習を受けたり。週4日は柔道だね」。
 ふと意地悪な質問をぶつけてみました。「おやきか柔道か、どちらかひとつと言われたらどっちを取る?」。
 「どっちも必要。両方とも勉強しなきゃダメ、考えなくちゃダメだから。日々変化していくものに、いかに対応していくか。それが楽しいのよ」。答えは明快。即答でした。
 この不屈の精神こそが柔道家たる所以なのか。幸広さんの新たなおやきの世界が楽しみです。


信濃製菓―しなのせいか
責任者 小宮山幸広
創業 昭和37(1962)年
長野市若穂綿内6285 ℡026-282-2497

卸専門の和菓子屋で創業し、平成7年に実店舗を構えたおやき専門店。初代の名を冠した「喜六さんのおやき」は、地元のみならずネット販売のファンも多い。
生地にこだわり、具ごとに生地を変えているのが特徴。他にこねつけ、赤飯、おこわなども販売している老舗店。

幸広さん(左から2人目)とスタッフ

価格 140円(税込)
生地 薄力粉、もち粉、砂糖、ベーキングパウダー
   丸なすの生地はBP少なめ
   小豆の生地はBP多めで上新粉入り

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