さかた菓子舗―安曇野市

野沢菜

幅7.0㎝x厚さ3.6㎝ 123g 野沢菜塩漬け、椎茸、油揚げ (醤油、みりん、砂糖、サラダ油、無添加粉末出汁、一味)

ひじきくるみ

幅6.8㎝x厚さ4.0㎝ 133g ひじき、人参、油揚げ、こんにゃく、くるみ、大豆、ごま(醤油、みりん、サラダ油、砂糖、無添加粉末出汁)

小倉

幅6.5㎝x厚さ3.7㎝ 141g 小豆粒あん(グラニュー糖、水あめ、塩)

 店の駐車場に立つと、目の前に安曇野の田園風景が広がって背景には北アルプス。建物は中信地方特有の棟飾りである雀おどしが付いた本棟造り。風情ある佇まいに感動しながら、入り口に向かうと夫婦道祖神が出迎えてくれます。
 "焼きおやき"の人気店、さかた菓子舗は3代続く和菓子・おやき店。今でこそおやきがメインですが、昭和30年の創業時は和菓子店としてスタートしました。初代の酒田訓雄さんと公子さん夫婦が松本城近くの松本市街地でお饅頭やお団子を売っていました。昭和40年ごろ、近くにスーパーマーケットが進出。何か特色がある商品を、と作り始めたのが焼きおやきでした。
 「おじいちゃんは何でも一から作り出すのが上手で。おやきも試行錯誤しながら、今の形になっていったんです」と話すのは3代目、現専務の酒田涼平さんです。おやきを始めてからは、おやきとお饅頭のみに特化。ほぼ50年、この形で営業を続けてきましたが、製造過程がまったく違って手間がかかることから、5年前にお饅頭を止めました。「でも、何となく寂しいなあ」(涼平さん)ということで、現在はお饅頭の代わりにこねつけが店頭に並びます。

 初代が苦労して編み出したさかたのおやきは、灰焼きでもなく、蒸かしおやきでもない、独特な製法です。他店のおやきと一番違うのは、具がどっさりで皮が薄いこと。おやきは通常、具と生地の量のバランスが同じか、生地の方を多くします。生地量が多ければ多いほど、包みやすいから。しかし、さかたは具の分量の方が多いのです。その多い具を包むためには、生地を薄く伸ばすことはもちろん、生地を優しく扱わないとすぐに穴が開いたり破けたりします。
 また、生地の小麦粉は中力粉を使うのが定番ですが、さかたでは、よりグルテン量が多い中強力粉を使い、しかも水分量が8割。一晩寝かせたこの生地を包むにはよほどの熟練の技が必要です。
 加熱方法もまた、他店にはない鉄鍋仕上げ。おやきを鉄鍋に並べて片面をじっくり20分焼き、裏返して空気穴を開けてさらに20分、途中水分を入れて中まで加熱して焼き色をつけて仕上げます。1個出来上がるまでに40分。とても量産できる作り方ではありません。

 おやき製造に携わるのは、2代目の現社長酒田剛さん、妻の泰子さん、息子の涼平さんと娘さんの家族4人とスタッフ1人。社長自ら製造ラインに立っていることにびっくりすると、「とにかく大変な作業なので、スタッフを募集してもすぐに辞めてしまうんです」と涼平さん。そのため、身内でしっかりまかなえるようにしているそうで、煮物専門のスタッフが2人、店頭の接客スタッフ2人を加えて、「何とかギリギリ回している」とのこと。来店客がひっきりなしに訪れる中、ひとりひとりが自分の持ち場で休むことなく動き回っている姿は見ていて気持ちいいほどです。
 おやき作りは午前2時か3時からで、早い時は1時から作ることもあるとか。真夜中から作るのは家族4人。スタッフが出勤する7時までにはあらかた作り終わってそうです。涼平さんは「小さい時からこの時間帯で生活しているし、真夜中から仕事しているのは自分にとって見慣れた風景なんです」と笑います。
 おやきの種類は野沢菜、ひじきくるみ、小倉、やさい、うの花、きんぴらの6種類。一番人気のひじきくるみには、人参、油揚げ、こんにゃく、くるみ、大豆、ゴマなど、歯ごたえとコクを出す食材がたっぷり。野沢菜は1㎝にカット、旨味の元になる椎茸、油揚げを加えるので風味豊かな味わいです。それだけでもおいしいお惣菜を、さらに手間のかかるおやきに仕上げるのが、譲れないこだわりなのです。

 週末になると午後1時前には売り切れてしまいます。時には「もっと作って」「(値段が)高過ぎる」「具をもっと減らせば」などと言われることもありますが、手作りは機械生産にはない手のぬくもりがある分、手間と時間がかかるもの。涼平さんは「皮の薄さとたっぷりの具が売り。具と生地のバランスも先代から作ってきたレシピ通り、今さら変えることは考えられません」。
 心を込め、時間をかけて作るからこそ量産はできない。ネット販売や卸売りもできない。でも3代目に規模を大きくするつもりは毛頭ありません。「大変だけど魅力的な商売だと思っています。途絶えさせたらもったいない。この規模のまま維持していけたらそれでいい。お客様の『おいしい』の声があるから、これからも頑張れます」。父親でもある涼平さん、将来は娘に継がせたいか聞くと「娘の気持ち次第。無理強いはしないです。大変な商売ですから」と優しい父親の顔をのぞかせました。


さかた菓子舗
代表 酒田 剛
創業 昭和30年
安曇野市穂高有明8177-3 ℡0263-88-2737

皮の薄さと具の多さが"売り"の焼きおやきの人気店。松本市街地から安曇野市に移転後も、お昼過ぎには売り切れてしまうほど。
鉄鍋で焼くため、出来上がりまでに40分以上かかるというこだわりのおやき。一番人気は「野沢菜」。他にこねつけがある。

涼平さん(右)と母の泰子さん

価格 227円(税込)小倉221円(税込)
生地 中強力粉、水

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