丸八たきや―長野市元善町

野沢菜

幅7.5㎝x厚さ4㎝ 95g 野沢菜塩漬け (醤油、砂糖、味噌、サラダ油、粉末だし)

丸なす

幅8.5㎝x厚さ3㎝ 137g 丸ナス(味噌、砂糖、サラダ油)

きざみなす

幅7㎝x厚さ3.5㎝ 96g 丸ナス(味噌、砂糖、サラダ油、粉末だし)

あんこ

幅6㎝x厚さ3.5㎝ 93g 小豆粒あん(砂糖、塩)

 善光寺の仲見世を歩くと、あちこちにおやきの看板を見かけます。ひと昔前には土産店ばかりが目についた通りですが、今では個性的な飲食専門店が多くなり、おやきを販売する店も7店舗あります。そのひとつが丸八たきや。仲見世通りにおやき店が増えたのはここ数年で、女将の山本里枝さんは「前はそんなに多くなかったから、おやき目当ての食べ歩きのお客様は結構立ち寄ってくれたの」と前置きしつつ、「今の若い人はスタンダードよりも珍しいおやきの方に目が行っちゃうみたいね」と、変わり種メニューが並ぶおやき店をチラッと見ます。
 大正7年創業、100年以上も仲見世に店を構える丸八たきやは、1階が土産店、2階は地元でも人気のそば処。土産店の軒先で温かいおやきを販売しています。並んでいるのは、野沢菜・切干大根・丸なす・きざみなす・きのこ・野菜ミックス・かぼちゃ・あんこの定番おやき。季節限定でごぼう・おから・りんご・カレー・ピザなども登場しますが、代表山本章夫さんのポリシーは「おやきはあくまでも昔から作られてきた定番がいい」。そのため季節ごとに手に入る地元野菜を使って、あくまで野菜がメインの定番おやきを作っています。
 特にこだわるのは食材。例えば、おやきに入れる野沢菜は通常、長期保存できるように塩をどっさり入れた野沢菜の古漬けを使いますが、丸八たきやは土産店らしく、商品の野沢菜漬けを仕入れているのと同じ漬物屋さんが漬けた5ミリカットの浅漬けを使っています。野沢菜の古漬けは、おやきにした時きれいな色には仕上がりません。「やっぱり食感と色にこだわると、ちょっと高いけど浅漬けの方がおいしさが違うの」との女将の言葉通り、煮込んだ野沢菜なのにきれいな緑色が残り、噛んだ時の野沢菜のシャキッとした歯ごたえと風味は格別です。

 仲見世はじめ北信の土産店がおやきを販売するのは一般的ですが、その多くは仕入れたおやきを売っています。丸八たきやも元々は仕入れ販売をしていたそう。しかし、平成21年に信州おやき協議会の設立をニュースで知った里枝さんが、「よそから仕入れたおやきをただ売るよりは、自分たちで作った思い入れのあるおやきを売りたい」と思い立ったのが同店のおやきの始まり。おやきを作れるスタッフを探し、厨房を整え、おやき作りの指導を受けて、まさに試行錯誤のスタートを切りました。「丸めた具を冷凍すると作りやすい」というのは、他のおやき屋から移ってきたスタッフに教わったコツ。今でも具はいったん冷凍していて、このひと手間をかけることで生地の薄さが均等になり、見た目も美しいおやきに仕上がるそうです。
 「ねぇ美しいでしょう? この生地の薄さにもこだわっているんですよ」と言うのはチーフスタッフの山本智佐恵さん。生地に使う小麦粉は、おやきを始めた当初からお付き合いしている卸問屋さんから入れているオリジナルブレンド。この粉にベーキングパウダーを少し混ぜたりしながら、生地作りをしています。
 美しくおいしいおやきにこだわる智佐恵さん、バリバリの生え抜きスタッフかと思いきや、実は代表である山本さんの従妹で、長年会社員として事務職をこなしていたとか。勤務先を早期退職して2年後、丸八たきやで働き始めて、そこからおやき作りのチーフに抜擢されたという逸材です。
 「最初なんて何がなんだかわからなくて失敗ばかり。作るのに時間はかかるし、形がきれいにならないし」と笑います。それでもコツコツと地道に毎日おやきを作り続けて、「丸八たきやのおやき」の形を作り上げたのは、智佐恵さんと共に働いてきた6人のスタッフの努力の賜物です。女将の里枝さんは「口は出すけど手は出さないの。あははっ」の言葉通り、本当に手は一回も出してこなかったそうで、智佐恵さんたちへの信頼の厚さがわかります。

 そこまで、おやき作りにこだわりがあっても、やはり時代の波は否応なし。「仲見世通りで毎朝作りたてのおやきを売る店はうちだけ」と自負する里枝さんですが、おやき店の増加に加え、コロナ禍での観光客減少で、店頭での売り上げはまったく期待できなくなっていると言います。それでも「善光寺で食べたらおいしかったから送ってほしい」との依頼が来たり、信州の特産品サイトから注文が入ったりと、全国への地方発送の売り上げは伸びているそうです。
 「今は観光に来てもお土産を買って帰るという人はごくわずか。職場でもご近所でも関係が希薄になって、お土産を買おうなんて思わないのよ。だから土産店という形はもう長くは続かないだろうと思ってる。でも、やっぱり手塩にかけて育ててきたおやきと手打ちそばは残したい。そのための道筋を考えているの」と里枝さん。
 丸八たきやはこの先も、善光寺のお膝元でおいしいおやきを作り続けます。


丸八たきや
代表 山本章夫
創業 1918年
長野市元善町482 ℡026-232-4424

善光寺の仲見世で100年以上続く老舗土産店。観光客には自店で作ったものを食べてもらいたいとの思いから、2010年におやき製造を開始。仲見世では唯一、自家製おやきを販売、毎朝作りたてを提供している。
蒸かしてから焼き目をつける「蒸かし焼き」製法と、国産食材にこだわる。

里枝さん(左)、智佐恵さん(右)とスタッフ

価格 180円(税込)
生地 中力粉(2種ブレンド)、砂糖、ベーキングパウダー
   蒸かした後に焼き目

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