北御牧村味の研究会―東御市

野沢菜

幅6.8㎝x厚さ3.5㎝ 100g 野沢菜塩漬け(醤油、みりん、三温糖、塩、煮干粉、植物油)

なす

幅6.3㎝x厚さ3.3㎝ 104g 長ナス(味噌、三温糖、塩、煮干粉、片栗粉、白ごま、植物油)

あんこ

幅6.8㎝x厚さ3.4㎝ 102g 小豆粒あん(甘納豆、塩、片栗粉、植物油)

 信州東部、東御市の道の駅「雷電くるみの里」や市内のスーパーに色とりどりの丸いラベルが貼られたおやきが並びます。農事組合北御牧村味の研究会(通称あじけん)が作るおやきです。。
 昭和60(1985)年創業のあじけんはもともと、合併前の旧北御牧村が地域雇用の場の創出と高血圧や貧血が多い住民の食生活改善を目的に、「地元産の大豆を育てて(1次産業)豆腐を作って(2次産業)売る(3次産業)」という"農業の6次産業化"を目指して設立した研究会です。あくまでも地元産の素材で、添加物を一切使わずに、地元のお母さんたちが手作りすることが創業以来のこだわり。おやきのほか、目玉商品の「みまきとうふ」を筆頭に、味噌、しょうゆ、お菓子などを作って販売しています。
 あじけんの加工施設にお邪魔してみると、施設内の整然としていることに驚かされました。整理整頓された中に調理機器がずらっと並び、豆腐、焼き菓子、おやきの3エリアに区切られて、スタッフが黙々と動き回っています。おやき作りはお昼まで。お豆腐は午後2時までに納品。作る時間が少しずつずれているそうです。
 スタッフはおやき6人、豆腐5人、菓子2人、それに配達3人。それぞれ年代が違っていて、おやきは50~60代、豆腐は30~40代、配達はシルバー世代なんだそう。「若い世代は子育てがあるから、朝はゆっくりがいいでしょう。子育てが終わって朝早くても大丈夫な人はおやきに。そうやって若いうちは豆腐部門を担当しながら、おやきにシフトしていくのがうちのやり方なんです」と話すのは代表の小林敬子さん。
 おやき業界にとって、作り手の確保は喫緊の課題。こんなふうに人材育成が出来るのは羨ましいの一言です。この理想的な人材配置を考え出した小林さんは、いったいどんな人生を送ってきたのかと話を聞いてびっくり。まさに波乱万丈。この人生があってこそ、今の経営スタイルが確立されたんだなと確信しました。
 酪農農家に嫁いた小林さんは結婚10年目にご主人を突然亡くします。同じ年に義父も亡くなったため、いきなり"ひとり酪農家"に。3人の子育てをしながら、酪農をこなし、脳梗塞で倒れた義母の世話も7年間。そんな激務と並行して酪農ビジネスの管理経営を学び、県知事賞も受賞したスーパーウーマンなのです。
 小林さんがあじけん組合長への就任を打診されたのは、子育てが一段落した頃。当時、あじけんは設立から12年、年収2000万円を上げるまでに成長していたものの、経営手腕を持つスタッフはいませんでした。
 「牛乳と豆乳の違いだけ」と笑う小林さんは、酪農で得たノウハウをベースに力量を発揮。危機管理や保健衛生、会計事務所との契約など、企業として必要な経営基盤を整えていきました。昔からのおやき文化がなかった東信でおやきを作り始めたのも、経営を強化するためでした。あじけんの主力商品だった北御牧特産の薬用人参が安価な中国産に押されて、加工品を作っても売り上げは右肩下がりだったため、なんらかのテコ入れが必要だったそうです。
 新商品としておやきを販売しようとスタッフ全員で研究を開始。おやきで育っていないスタッフがほとんどなので、北信出身のスタッフに作り方の指導を受けながら、湯ごねのおやきを作り出しました。湯ごねのおやきは冷めても硬くなりにくいのですが、熱湯でグルテンの形成が抑えられてしまうため生地が伸びにくく、包みにくいという欠点があります。けれど、そこはさすがに「研究会」、熱湯をある程度まで冷まし、塩分を加えることで作りやすく改良しました。
 生地が出来たらスタッフ全員でおやき作り。蒸かした後に焼き目をつけます。卸先の10時開店に間に合わせるのですから、全員猛ダッシュです。
 あじけんの定番は、野沢菜・切干・きのこ・にら・もやし・あんこの6種類。かぼちゃ・みそじゃが・なすが季節限定です。どれも午前中に売り切れてしまうほどの人気です.
 おやきが豆腐と並ぶ人気商品として定着した2022年3月、あじけんは新しい組合長の下で新しい時代をスタート。小林さんは長かった任務を終え、ほっと一息かと思いきや「今まではリピーターさんに支えられてきたけれど、これからはITの時代。だからスマホに買い替えて勉強を始めたの。Facebookやホームページを1人で作ったし、ふるさと納税にも登録したし。購入する世代が変わるのだから、こちらも変わっていかないと」ときっぱり。さすがです。
 「これからは違う形でわたしなりにサポートしていくつもり。どんどん発信して、どんどん打って出る。年は取っていくけど、頭はますます進化しているのよ」。この心意気には心から脱帽です。


北御牧村味の研究会
代表 小林敬子
創業 平成元(1989)年
東御市下之城963-1 ℡0268-67-3623

旧北御牧村が地域雇用の場の創出と住民の食生活改善を目的に、"農業の6次産業化"を目指して設立した製造販売組合。
地元産の大豆を使った「みまきとうふ」は一番の人気商品。季節おやきの「みそじゃが」は御牧ヶ原の伝統野菜「白土じゃがいも」を使用。ホクホクとした食感が大人気。

小林さん(左)とスタッフのみなさん

価格 130円(税込)
生地 中力粉(地粉)、熱湯

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