おやきうしこし―安曇野市豊科

おな

幅7.5㎝x厚さ5.0㎝ 169g 野沢菜塩漬け (味噌、砂糖、サラダ油、あじ塩)

なす

幅8.5㎝x厚さ5.0㎝ 157g 長ナス(味噌、サラダ油、あじ塩)

あんこ

幅7.5㎝x厚さ4.5㎝ 129g 小豆粒あん(砂糖、塩)

「焼き芋だって石焼がおいしいじゃない。だから石焼がいいかなと思って始めたの」。
 にこにこ笑顔で話すのは代表の牛越順子さんです。東筑摩郡生坂村で生まれ、灰焼きおやきで育った牛越さんは、根っからのおやき好き。囲炉裏で焼いた灰焼きおやきはもちろん、重曹を入れて作るおまんじゅうタイプのおやきも大好きでした。
 若い頃からずっと抱いていたのは「おやきの店を開きたい」という熱い思い。子どもの誕生をきっかけに、家にいておやきを作ることができればと、40歳を過ぎて開業を決意します。生坂村のおやきと同じ灰焼きよりも、自分で考えたおやきを作りたいと、オリジナル製法を追い求め始めました。
 「そりゃ、今の形になるまでは試行錯誤の連続。最初はオーブンで作ってみてダメ、次はこれ、次はこれ、って試作の繰り返し。本当に大変だったわ」。開業から5年ほど経った頃、今の店舗を構えると同時に石を敷き詰めた大きな窯を設置。うしこし独自の石焼製法を確立させたのです。苦労の末に生まれた牛越さんオリジナルの石焼おやきは、県内外からひっきりなしに買い求める人が訪れる人気おやきになりました。
 週末は県外車も含めていっぱいになるという駐車場に車を停めると、お店の全開の窓からは、焼けた石の熱気がムンムン。ずらっと並ぶ石焼き窯の下には大型のガス台が5台、こちらも強火全開です。窯の蓋を順番に開けて、焼けた石の中に埋もれたおやきをトングで次々と回転させる焼き手が3人、ほかに生地を計量して具を包む、焙烙で表面を乾燥させる、焼き印をつけるなどの作業が、それぞれ無駄なくスムーズに流れていきます。「暑いから窓を外してあるの」との言葉通り、石窯の前の窓はサッシごと見当たらず。ほんとうに暑いのです。
 朝の仕込みは午前5時から。牛越さんが1人で野菜を刻んだり、粉を練ったり、火入れをしたり。8時半にはスタッフが勢ぞろいしておやき作りがスタートし、9時半の開店前にすでにお客が待っていることもしばしばです。創業時は2人で作っていたそうですが、今では常時6、7人のスタッフが、お昼過ぎまでおやきを作り続けます。
 ここ数年は全国からのメディア取材が増えたため、「とてもじゃないけど、作るのが間に合わない」という状態のよう。「ほんとは地元向けに始めたのに、今では県外からのお客さんが半分以上。でも開業当初からの地元の常連さんもたくさんいるし、ホームページもないのに調べて来てくれるお客さんも多い。本当に感謝してます」と牛越さんは話します。
 おやきは9種類で、なす・切り干し大根・野菜ミックス・激辛・かぼちゃ・黒糖・チーズ・あんこ・おな。すべて通年メニューです。「なす」は長ナスを1センチ程度に刻んで油を絡めた後、味噌を塗った生地にギュッと押し込み、振り塩をします。「おな」は野沢菜漬けを塩抜きして炒め、塩と砂糖で下味をつけた後、こちらも味噌を塗った生地で包みます。変わっているのは「野菜ミックス」。一般的にミックスというとキャベツが主体ですが、うしこしでは白菜がメイン、そこに長ナスの刻みを合わせているとか。他にも沖縄から取り寄せている黒糖と味噌の「黒糖」、ミックスチーズと味噌の「チーズ」、手作りキムチ味噌を使った「激辛」と、食べてみたいおやきが目白押しです。
 生地にもこだわりが詰まります。蒸かしでも油焼きでもない素焼きのおやきは、粉の味がストレートに出るため、「北海道の中力粉にこだわってるの。これじゃなきゃ絶対にダメ。それにね、機械練りもダメ。機械を使ってみたけど味が変わっちゃう。常連さんにはすぐにわかるのよ」と牛越さん。息子さんには呆れられていると笑いながらも、1回ごとに5キロの粉を、しかも1日に何回も練っているそうです。
 焼けた石の中で焼き上げるため、灰焼きおやきと同様に1個出来上がるまでにかかる時間は40分。石窯に入るおやきの数と所要時間を計算すれば、おのずと1日に作れる個数も限られてしまいます。毎日午後2時前には売り切れてしまうそうですが、「体が無理、もうこれ以上は増やせないわ」。
 「熱中して突っ走ってきたからね、25年間、あっという間だった」とおやき一筋の年月を振り返る牛越さん。「もう、いつやめてもいいと思ってるの」と笑いながらも、ふとつぶやいたのは「人生ってさ、常に考えてないと楽しくないよ。人の真似しててもつまらないじゃない」。
 まだまだ快進撃は続いていく、と確信した瞬間でした。


おやきうしこし
代表 牛越順子
創業 1996年
安曇野市豊科田沢7038-21 ℡0263-72-6318

長野自動車道安曇野ICより車で3分。あちこちに立つのぼり旗が道案内してくれる。
県外からの来店も多く、予約が欠かせない人気店。オリジナル製法の「石焼おやき」は、具が9種類。特に「黒糖」「激辛」「チーズ」の変わり種は人気。
店舗奥の休憩所では焼きたてが食べられる。

牛越さん(中央)とスタッフ

価格 220円(税込)
生地 中力粉、水

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