大久保西の茶屋―長野市戸隠

野沢菜

幅7.7㎝x厚さ3.0㎝ 109g 野沢菜 (砂糖、大豆油、塩、粉末だし)

なす

幅9.0㎝x厚さ3.5㎝ 105g 長ナス(醤油、砂糖、大豆油、塩、粉末だし)

小豆

幅7.2㎝x厚さ3.0㎝ 108g 小豆粒あん(砂糖、塩)

 創業は江戸時代初期。大久保西の茶屋は、戸隠でも老舗中の老舗です。初代の小林伊左衛門喜代七は真田家の松代藩で茶坊主の職にありました。天領であった戸隠一山と幕府の連絡役を務めていた松代藩の意向もあって、初代喜代七は戸隠神社の御庭番に。3代喜代七が一山の命を受けて茶屋を建てたのが始まりです。それ以来、同じ場所で"街道の茶店"を営んできました。
 昭和39年に長野市街と戸隠をつなぐ戸隠バードラインが開通したのをきっかけにその5年後、12代目小林一彦さんは蕎麦店へ切り替えることを決断。茶屋時代のメニューは封印、そば打ちを会得し、新しいメニューを開発するなど、蕎麦店を軌道に乗せるのに家族全員が必死だったそうです。そんな中で誕生したのが、蕎麦粉が入ったそばおやきでした。
 店でおやきを出し始めたのは46年頃。初めは店先の囲炉裏で灰焼きおやきを作っていましたが、冷めると硬くなってしまうため、蒸かしてみたり、フライパンで焼き目をつけたり。一彦さんの妻まさ江さんが10年ほど試行錯誤を繰り返した末に、今のベーキングパウダー入りの軽くふんわりしたそばおやきが完成しました。

 お蕎麦屋さんらしさは蕎麦粉入りというだけではありません。
 おやき作りの仕上げに使っていたのは、なんと、蕎麦に付き物の薬味皿。生地を伸ばして具をのせて包み終えたところで、薬味皿が登場。おやきをのせて手のひらでポンポンと軽く叩いて空気を抜いたら、手の中で形を整えて蒸し器に並べていくのです。
 「蕎麦粉8割、小麦粉2割のところへ、水を9割入れるから、かなり軟らかい生地なんですよ。だからお皿の上でポンポンと整えて。薬味皿がちょうどいいサイズでね。そば屋だから薬味皿はたくさんありますしね」。13代目となる取締役社長の小林修稀〔のぶき〕さんが笑いながら教えてくれました。
 蒸かし上がったおやきを取り出すところで、またびっくり。なんと蒸かし上がりに水をかけているのです。修稀さんは「そのまま取り出そうとすると、敷布におやきが張り付いていて取れないんですよ」。確かに蕎麦粉を加熱すると、そばがきのようにベタついてしまいます。ベタつきを取るには冷ますのが一番なんですね。
 定番の具は、野沢菜・かぼちゃ・大根の3種類。春は菜の花、夏になすも加わります。おやきに使う蕎麦粉も野菜もすべて自家栽培しているのも、大久保西の茶屋の特徴です。「お客様においしい蕎麦を提供したい」という一彦さんの思いから始めた蕎麦栽培が、薬味の大根もネギも、そしておやきに使う野菜も、と広がっていき、今では蕎麦もおやきも、栽培から販売まで自らで手掛ける徹底ぶり。畑仕事専門だという一彦さんは、「朝から晩まで畑にいて、トラクターに乗ってる」のだとか。
 おやきの具の野沢菜は普通、収穫した野沢菜を一気に塩漬けし、必要な量だけ塩抜きして調味しますが、大久保西の茶屋では野沢菜は漬け込まずに生のまま調理。そのため、収穫期には社員総出で大量の野沢菜を刻んで、味をつけ、小分けにして冷凍保存するそうです。だからなのか、ここの野沢菜おやきは緑が鮮やかな上に歯応えもシャキシャキ。他では味わえない野沢菜です。
 一番人気の大根も、生を千切りして塩などで炒めて冷凍しているので、さっぱりとした味付けがくせになりそう。かぼちゃも収穫期に一気に蒸かして、味をつけてから冷凍します。これもまた自然な甘味が感じられました。

 そばおやきは戸隠本店、長野駅前店で販売し、ネット通販も行っています。営業担当の修稀さんは、全国で開かれる信州物産展での出張販売も行っていて、特に関東・東海地方の百貨店など年間20件ほどの物産展を回ります。定期的に開催される物産展ではリピート客も多いそうで、「『首を長くして待ってたよ』って20個、30個のまとめ買いや、冷凍ストックできるからって大量買いする一人暮らしの男性がいたり。売り切れそうになると慌てちゃって、『早く作って送って』って電話するんですよ」と修稀さんが言うと、一彦さんは「連絡来るとこっちも慌てちゃってね。バタバタになっちゃって畑どころじゃないんだよ」。
 そばおやきの人気を肌で感じている13代目は、400年の伝統を受け継ぐ店のリフォームも検討中。「おやき製造の場所をもっと広くしたいし、総菜も販売許可を取りたい」とやりたいことが盛りだくさんです。手塩にかけた蕎麦と野菜で、もっともっとたくさんの人たちに「おいしい信州」を届けてください!


大久保西の茶屋
代表 小林一彦
創業 寛永元(1624)年
長野市戸隠豊岡2763番地 ℡026-254-2266

蕎麦粉8割に小麦粉2割、ベーキングパウダーを入れてふっくら仕上げるそばおやきが名物。蕎麦も野菜も100%自家栽培。野沢菜や大根は生のまま調理するため、シャキっとした食感が珍しい。
戸隠の本店と長野駅前店のほか、通販や全国の物産展でも販売している。

一彦さんとまさ江さん(中央)、修稀さん(左端)とスタッフのみなさん

価格 243円(税込)
生地 蕎麦粉、中力粉、ベーキングパウダー

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