あづみ堂―安曇野市

うす皮野沢菜

幅7.5㎝x厚さ2.6㎝ 120g 野沢菜 (味噌、醤油、砂糖)

プレミアム長なす味噌

幅11.2㎝x厚さ2.4㎝ 149g 長ナス、青じそ(味噌、砂糖)

そば皮なす

幅8.1㎝x厚さ3.0㎝ 85g 長ナス(味噌、砂糖)

うす皮つぶあん

幅7.5㎝x厚さ2.5㎝ 120g 小豆粒あん(砂糖、塩)

 安曇野インターを出て1分、16のショップが立ち並ぶスワンガーデン安曇野にあるおやき専門店があづみ堂です。風情ある佇まいに誘われて店内に入ると、店の真ん中に囲炉裏。その囲炉裏を取り囲むように、おやきがズラーッと並んでいます。生地だけで6種類、包まれる具はなんと25種類。目を見張るばかりのおやきの数々、種類の多さはおそらく、信州のおやき店ナンバーワンでしょう。
 「ほんとに多いですよね。それぞれの生地ごとに春夏秋冬で変わるおやきが4~8種類あるんです。自分でも覚えきれないくらいですよ」。笑いながら話すのは店長の佐野嘉明さんです。
 生地は、うす皮2種類、そば粉入り、十六穀入り、もっちりした米粉、ふんわりやわらいかい蒸かしの5タイプ。加熱方法も3種類あり、鉄鍋で焼き目をつけて餃子のように蒸し焼きにして仕上げる焼き、パン生地同様にイーストで発酵させた後オーブンで仕上げる焼き、セイロで蒸かした後に焼き目をつける蒸かし焼き。生地のタイプごとに一番合った加熱方法にしています。
 定番の具は、<プレミアム(うす皮)>信州牛野沢菜・山賊焼ねぎ・きのこチーズ・長なす味噌、<うす皮>野沢菜・つぶあん・きんぴらごぼう・野菜ミックス・ひじき、<そば皮>野沢菜・かぼちゃ・切干大根・しいたけ・つぶあん・なす、<十六穀>くるみ、<米粉>かぼちゃいとこ煮、<蒸かし>野沢菜入り豚まん・ポテトカレーと多種多様。加えて季節ごとに限定おやきがラインナップして、まるで"おやきのデパート"のようです。

 店の母体は、おやきのほか蕎麦や菓子などを製造する有限会社あづみ野食品。昭和61年に同社工場横に小さなおやきの売店を開設したのがあづみ堂の前身でした。当時はうす皮とそば皮だけでしたが、平成9年10月に豊科インター(当時)前にスワンガーデン安曇野がオープン、「あづみ堂」として新規出店して以降、商品開発担当者をメインにスタッフ全員で意見を出し合い、新しいおやきを次々と開発してきました。
 観光客はもちろん、顔馴染みの地元客も立ち寄りやすい好立地。当時は製造スタッフ12人が、朝6時から閉店時間まで作っても間に合わないほど多忙を極めていたそうです。

 それにしても店長の佐野さん、おやき店には珍しいワイシャツにネクタイ、シュッとした立ち姿で、初対面のときは正直なところ、ちょっと驚きました。が、経歴を聞いて納得。あづみ野食品に入社する前は京都のホテルマンだったのだそうです。つまり、おやきとはおよそ縁のない方でした。
 忙しいホテル勤務に疲れ果てていた時期、趣味の登山で信州によく来ていた佐野さんは、観光客のひとりとしてあづみ堂と出会いました。おまんじゅう=甘いものと認識していた佐野さんは、おやきに野菜が入っていることにただただびっくり。「景色がよくて自然がいっぱいの信州で、ゆっくりできたらいいなあ」と思っていたところに、あづみ野食品の社員募集を知って転職を決意しました。
 「ほんとに安易な考えでした。登山が好きで長野に来たのに、住んでしまうと忙しくてなかなか登山にも行けなくなってしまった」と当時を振り返る佐野さん。入社からしばらくして、責任者がいなかったあづみ堂に店長として配属され、現在に至ります。おやきのことは全く知らずに責任者になったため、ベテランスタッフたちに一からおやき作りを教わりながら、おやきに馴染んできたそうです。
 しかしながら、おやき作りよりも大変だったのは大勢の女性スタッフを束ねていくこと。経験豊かなホテルマンとして大勢のお客様に対応してきた佐野さんも、職人気質でプライドが高い熟練スタッフたちをまとめるのはまったく勝手が違ったよう。スタッフ同士で意見が対立することもしばしば、そのたびにトラブルシューターとして間に立ち、丸一日ほかの仕事ができない時もあったとか。そうはいっても「あの頃はとても活気があって、時々喧嘩はしても皆でいいものを作ろうという思いで一致団結をしていましたね」と振り返ります。

 ところが、数年前から人手不足が深刻な状態に。作り手を募集をしても集まらない、少ない人手に頼っていても製造が追いつかない。そんな事態から一部機械製造の導入に踏み切らざるを得なくなりました。現在は、グループ会社内で連携して作業を分担、あづみ堂では毎日スタッフ7名ほどが働いています。
 「昔と比べるとかなり静かになったけど、反面寂しさもありますよ」と佐野さん。「私はおやきを食べて育った人間ではないけれど、やはり郷土食ですから次の世代に繋げていかなくてはいけないと思っています」。"Iターン信州人"の力強い言葉に勇気をもらいました。
 「若いスタッフと一緒に、これからもどんどん知恵を出し合って新しいおやきを開発していきますよ」。佐野さんの静かな口調に一瞬、熱がこもりました。あづみ堂のラインナップはまだまだ増えそうです。


あづみ堂
店長 佐野嘉明
開店 平成9年
安曇野市豊科南穂高1115 ℡0263-71-1400

長野自動車道安曇野インター隣接のスワンガーデン安曇野に店を構える、おやきや蕎麦を製造している有限会社あづみ野食品の直営店。
種類の多さは群を抜き、生地や製法も違うおやきを25種類ほど常時販売。店内にある囲炉裏でおやきを焼きながら食べられる。漬物やわさび漬などの特産品も並ぶ。

佐野さん(中央)とスタッフのみなさん

価格 170円~220円(税込)
生地 プレミアム/うす皮:強力粉、塩
   そば皮:中力粉、蕎麦粉、イースト、砂糖

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