かあさん家―東筑摩郡生坂村

野沢菜

幅8.0㎝x厚さ5.7㎝ 241g 野沢菜塩漬け (醤油、砂糖、塩、植物油、粉末だし)

なす

幅9.0㎝x厚さ5.5㎝ 231g 長ナス(味噌、砂糖、植物油、粉末だし)

あんこ

幅8.0㎝x厚さ5.0㎝ 233g 小豆粒あん(砂糖、塩)

 囲炉裏の熱い灰の中に埋めて蒸し焼きにする伝統の灰焼きおやき。2019年春にオープンした東筑摩郡生坂村の道の駅「いくさかの郷」では、そんな昔ながらのおやきが手に入ります。
 まだ新しい灰焼きおやきの製造販売所、かあさん家〔ち〕の厨房に足を踏み入れて、まず驚いたのは「とにかく広い!」こと。すっきりした作業スペースに最新の調理器具。調理台も広々としていて、5人で周りを囲んでも"密"にならず、動線もしっかり確保されています。
 作り手全員が生地を170グラムに計量し、それぞれ具を入れ包む作業も、広い空間の中では小さく見えます。包んだおやきは、いったん鉄板でしっかり焼いてから灰の中へ。4つある灰炉に順番に入れていくので、とにかく時間がかかる印象の灰焼きおやきがどんどん出来上がっていくように見えるから不思議です。
 灰焼きおやきの調理場は細かい灰が飛び散るので煤けた印象がありますが、明るくてきれいなのにもびっくり。灰に埋め込んで作るので、ほとんどの場合、出来上がってからタオルでパンパンして灰を払い落とします。
 ところが、かあさん家には今まで見たこともない機械が。ビニールに覆われた台にトレイに並べた焼き立てのおやきを置いたら、「シュワーッ」とものすごい"風"を吹かせて、おやきの表面の灰をあっという間に吹き飛ばす仕組みです。これって建設現場などで使われるエアコンプレッサーみたいなものよね、と思いながら、そのアイデアに思わず拍手。緻密で丁寧な仕事と清潔感。作業場で感じた感想はこれに尽きます。

 おやきの種類はみっくす・なすの2種類。冬場は野沢菜が加わり、予約をすればあんこ・おからも作ってくれます。
 平日は300個前後、週末は500個近くを作っているそうですが、最近は1人あたりの購入個数が増加中。1人で20個、30個と買っていくお客さんもざらで、あっという間におやきが底をついてしまうことも多いそうです。焼き上がりまで40分かかる灰焼きは、作れる個数に限りがあるので、あまり種類は増やせないのが難しいところ。特に週末は予約がどんどん入ってくるため、確実に購入したい場合は予約必須です。

 かあさん家は平成10年、村営喫茶店閉店に伴い、村農業公社特産品開発部の女性たちが農産物直売所兼食堂の運営を始めたのが始まり。その後、地域に伝わる灰焼きおやきを作ってほしいというお客様の声を受けて、平成16年からおやきを作り始めます。
 立ち上げ時から、村農業公社が経営する形をとっているので、スタッフは全員、公社のパート職員。現在は30代から80代まで約30人がシフト制で働いています。スタッフの7割近くを占めているのが60代以上。最高齢は81歳だそうで、店長の中曽根真紀さんによると「彼女が一番元気かも。まだ20キロの粉袋を平気で持ち上げちゃいますよ」。伺った日はご本人がお休みで、お会いできなくて残念でした。
 勤務時間は朝7時30分から夕方5時まで。朝一番から始まるのはおやき作りで、それが一段落した頃、今度はランチタイム。かあさん家は道の駅の食堂も運営しているので、まさにフル稼働の時間になります。それが終わると、今度は翌日の仕込みが始まります。熟年層は朝7時半から夕方5時まで働いて、下準備を終えてから帰宅。若手は子供を保育園に預けてから8時に出勤、午後はお迎えがあるので4時には退社。スタッフそれぞれが、自分のライフスタイルに合った時間帯で働けるシステムが確立しているのは素晴らしいことです。
 ただ、「おやきや手打ちうどんの技術を若い人に伝えていかなくてはと思ってるんですけど、子どもがまだ小さいうちは難しいです。通しで入ってもらわないと伝えられないことが多くて」と中曽根さん。
 「もう疲れちゃってダメダメ」という年配のスタッフには「大丈夫、ボケてても手は動くから這ってでも出て来てね」と冗談で返すそうですが、若い世代のスタッフたちの子育てが一段落するまでは、まだまだベテランのみなさんに頑張ってもらわなくてはいけません。
 熟年層から若年層へ。伝える人、伝えられる人が働ける環境が整っているかあさん家ですが、その成果が目に見えるようになるのはもう少し先。昔は家庭の中で伝わってきた技術を、地域全体で伝承するために、かあさん家の挑戦は続きます。


かあさん家
店長 中曽根真紀
創業 平成10年
東筑摩郡生坂村5204番地1 ℡0263-69-2712

2019年にオープンした村営施設で食堂と灰焼きおやきを受け持つ。前身は1998年に生坂村の女性グループが立ち上げた特産品開発組合。
灰焼きおやきはお客の要望を受けて作り始めた。灰焼きおやきの施設としては県内でも規模が大きく生産量も多い。食堂の人気メニューは手打ちうどん。

中曽根さん(右から2人目)とスタッフのみなさん

価格 300円(税込)
生地 中力粉、水

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