やまざきや―上田市

野沢菜

幅5.5㎝x厚さ3.7㎝ 90g 野沢菜塩漬け (醤油、砂糖、味醂、植物油、七味唐辛子、粉末だし)

丸なす

幅5.7㎝x厚さ4.0㎝ 96g 丸ナス(味噌、砂糖、植物油)

あんこ

幅6.6㎝x厚さ3.0㎝ 91g 小豆粒あん(砂糖、水飴、塩)

 生地をちぎって左手に広げ、右手で竹箸を持って具をグッグッと2回押し込み、箸も置かずに右手の指先でヒョヒョッと先端をつまんだら、左手でおやきをガシッとつかんでセイロに並べる―。
 目の前で起こっていることが一瞬理解できないぐらいのスピードで、おやきが包み上がりました。たったの10秒足らず。生地に具を載せてから包み終えるまでが5秒ほど、という職人さんは多いけれど、生地をちぎるところから包み終えるまでがこの速さとは!
 超早業でおやきを作るのは「やまざきや」代表で2代目の山崎一男さん。「モタモタしてると生地が硬くなってくるから。熱いうちが勝負なんだ」と言いながら、またまた10秒足らずでおやきが一つ出来上がり。
 おやきには、武骨感があって豪快な印象を受けるものと、均整がとれた繊細なものがあると思っているのですが、一男さんの作るおやきはまさしく豪快そのもの。その出来栄えからは、かぶりつきたくなるようなおいしさがにじみ出ています。生地や具の計量は一切なし。それでいて見た目の大きさはほぼ同じ。長年作り続けてきたがゆえの手が覚えているおやき作りです。
 "生地が熱い"のは湯ごねだからです。小麦粉の2倍の熱い湯と砂糖を加えてミキサーで3分こねると、トロッとした湯ごね生地が出来上がります。山崎さんは、その生地をヒョイッと持ち上げて片栗粉の打ち粉の上に載せ、2、3個分ずつ生地をちぎってはおやきを丸めていきます。
 おやきの種類は、野沢菜・丸なす・きりぼし・ひじき・かぼちゃ・キャベツしめじ・あんこの7つ。ほかに季節おやきが2~3種類あり、特に6月から始める「なす」が一番人気です。
 具にする野沢菜は地元の漬物会社から、大根は地元の山口大根の切干、味噌も地元の仕込み味噌を、と地元食材を出来る限り取り入れています。「やっぱり地元のお客様が第一だからね」と一男さん。具を見分ける印にもこだわりがありました。「野沢菜」には黒ごまを、「きりぼし」には人参、「ひじき」は白ごま、「かぼちゃ」はパプリカが目印です。こちらも自然食材で判別しています。

 一男さんは高校卒業後、家業の和菓子屋を手伝い始めました。「気が付けば、もう50年以上和菓子作ってる」と笑う一男さん。仕事が嫌だと思ったことは一度もなく、和菓子屋を継ぐのが当たり前だと思っていたそう。
 朝6時から息子で3代目の恭平さんとおやきを作り上げると、名物の団子にとりかかります。団子の種類は9種類もあって、定番のしょうゆ・あんこの他に、季節の桜・草・ずんだ・山椒など彩り豊か。おやきも団子もすべて朝作って、その日のうちに売り切ります。
 「作ったその日のうちに食べて欲しいから、冷凍発送もしないんです」と恭平さん。昔から大福や団子、おはぎなどの「朝生菓子」(当日消費の和菓子)を作ってきたやまざきやだからこそ、おやきも当日消費にこだわるのです。
 恭平さんは製菓学校を出ましたが、卒業後すぐに信州には戻らず、横浜や神楽坂の和菓子屋で8年近く修業を重ねました。「実家を継ごうと思っていたわけじゃないから、ただ何となく仕事していたかなあ」と振り返ります。「幼い頃から和菓子を作って売る父や母の姿を見てきたせいか、家族と一緒にやっていくのも悪くないなあと思い始めて、10年前に戻ってきました」。人参をトントンと切りながら話します。
 それでも帰ってきた頃は親子喧嘩ばかりしていたそうです。母親の店を継いだわたしには共感することばかり。「わたしも同じ境遇だから、気持ちわかります」と言うと、「今は落ち着いてますよ」と笑顔です。
 一男さんも奥様の孝子さんも恭平さんも、みなが同じお店のロゴが入ったTシャツを着ているのも、なんだかとっても素敵です。一男さんたちがおやきや団子を作る傍らで、おこわやおやきの包装をしている孝子さんは、お客さんが来るとお店へ。「あんこが少なくなってきたから、作ってくださーい」。孝子さんから声が掛かると「はいよ!」と一男さん。すぐさまあんこのおやきを作り始めます。
 「父が高齢になってくるこれからは、大変になると思うんです。おやきや団子の需要も少しずつ減っていますしね」と恭平さん。店の形を変えることには不安があるそうですが、恭平さんの代に移りつつあるやまざきや。これからどんなお店になるのか楽しみです。
 お店からの帰り際、全員が外に出て、車が見えなくなるまで手を振って見送ってくれました。思わず心がほっこり。気さくでおおらかな一男さん、しっかり者の孝子さん、優しくて手を抜かない恭平さん。仲良し家族が作るおやきと団子は、これからも地元で愛され続けます。


やまざきや
代表 山崎 一男
創業 昭和31年
上田市中央5-10-20 ℡0268-24-8895

おやきと団子が有名な上田市の和菓子店。団子や大福などの朝生菓子だけでなく、おやきも当日消費にこだわり、その日のうちに売り切る。
熱湯でこねる生地は柔らかくもっちりした食感で、地元食材にこだわった具を包む。厨房にはライブカメラを設置。地元常連に愛されている。

左から一男さん、孝子さん、恭平さんとスタッフのみなさん

価格 183円(税込)
生地 中力粉、熱湯、砂糖、塩

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