おかあさんの味処たんぽぽ―長野市篠ノ井

野沢菜

幅7.4㎝x厚さ2.8㎝ 96g 野沢菜塩漬け、人参、大根、椎茸 (醤油、砂糖、ごま、サラダ油、粉末だし)

丸なす

幅8.5㎝x厚さ2.0㎝ 120g 丸ナス(味噌、砂糖、サラダ油、粉末だし)

ぴり辛なす

幅7.0㎝x厚さ3.0㎝ 102g 丸ナス、玉ねぎ、胡椒、ピーマン(味噌、砂糖、サラダ油、粉末だし)

つぶあん

幅6.8㎝x厚さ2.9㎝ 109g 小豆粒あん(砂糖、塩)

 長野市街地から国道19号を松本方面に車で20分。小田切ダムを過ぎてトンネルを抜けると、「おかあさんの味処 たんぽぽ」が見えてきます。おやきを筆頭に、駄菓子、仕出し弁当、総菜、漬物のほか、地元の農家が育てる野菜や穀物を直売する、文字通り"お母さんの台所"。店舗と加工所2棟からなるたんぽぽをまとめるのは小池峰子さん。80歳を超えているとはとても思えないパワフルな小池さんは、社員24人を束ねる現役社長であり、現場で指揮を取る料理人でもあります。
 もともと地元の農協職員として生活指導員をしていた小池さんですが、子育てのために仕事を辞めて専業主婦になりました。そんな時期に受講した農協主催の主婦講座をきっかけに、地元の篠ノ井信里の主婦仲間みんなで何かを作ったりいろいろな活動がしたいという声が高まります。そして平成4年7月、満を持して有志30人で立ち上げたのが「たんぽぽの会」です。
 最初は、週末2日間のみ開店するビニールハウスの野菜直売所からスタート。しかし、農家から預かって販売していた野菜が売れ残ってしまう日々が続きます。解決策を試行錯誤した結果、残った野菜は加工食品にすることにして、3年目からは全ての野菜を買い取りに。おやき作りは、加工品のひとつとして提案されました。
 おやきの商品化に携わったのは6人。それぞれの家のおやきの作り方をベースに、製法や味を話し合い、試作を重ねました。焼き蒸かしのおやきはモチモチッとした食感。地元の人たちにも感想を聞きながら、たんぽぽのおやきを作り上げてきたのです。
 「今までいろいろな生地や具に挑戦してきたけど、どれも長続きしなくてね。やっぱり最初の作り方に戻ったよ」と小池さん。今でも当時の製法のままだそうです。
 その後、おやきや加工品の売り上げは順調に伸び、さらに販路の拡大も見込めるようになります。当時の篠ノ井農業協同組合(現JAグリーン長野)の経営指導を受けて、平成11年には有限会社を設立。加工所を新たに建設して卸売りも始めました。長野駅や地元スーパーなど卸先も順調に増加し、平成20年に現在の3棟の施設をリニューアルしました。
 おやきの種類は野沢菜・野菜ミックス・ニラミックス・きりぼし・かぼちゃ・あずきの通年メニューに、春は雪菜・のびろ・竹の子などの山菜、夏は丸なす・ピリ辛なす、秋は栗あん、冬は野沢菜味噌味などが加わります。地元野菜をふんだんに使うことでコストを抑え、おやきの価格は現在税込みで140円。卸売り価格はさらに下がるため、利益は薄いと思うのですが、小池さんは「安いとは思うけど、自分たちで野菜を育てたり、地元の人たちも協力してくれるから、何とかやっていかれるよ」と笑います。
 工場に案内されて入ってびっくりしたのは、1ライン1人ずつで製造していること。工場でおやきを製造する場合は分業制が一般的で、生地を練る、量る、包む、焼くなどの作業の担当者がそれぞれを分担します。それをたんぽぽでは、おやきを作る全過程を1人で担当するのです。通常期は4ライン、繁忙期は6~7ラインで作っているのだとか。
 こういう方法もあるのかと納得しつつ、ライン方式では成果が一目瞭然。つまり、おやき担当のスタッフはお互い切磋琢磨しつつ、技を磨かざるを得ない環境にいるのです。このプレッシャーが製造スピードを速める原動力になっているのでしょう。小池さんの手腕を垣間見た思いでした。

 現在いる24人のスタッフはほぼ、地元の信里在住。最高齢の小池さんから30代の若手まで年齢層は幅広いのですが、やはりたんぽぽ立ち上げ当初から、小池さんと苦楽を共にしてきた70代のスタッフが一番多いそうです。創業時から30年ずっと一緒だという酒井二三子さんは、おやき製造のラインを受け持ち、まだバリバリ頑張る80代です。
 2022年には創業30年を迎えました。決して順風満帆とは言えなかった時期もあったと思うのですが、「30年あっという間。まあ、女の社会は難しいからね。いろいろあったけど、今思えば笑い話。それよりも自分たちがやってきたことの思いを、どうやって次の人たちに伝えていくかが一番の課題だと思ってる」。小池さんは清々しい表情で言い切りました。
 店内にずらりと並ぶ賞状は、すべてが農産物加工や6次産業化(生産=1次、製造・加工=2次、販売=3次)に関わる表彰で、たんぽぽの歴史そのものです。そして、2011年には小池さんが黄綬褒章を受章。そうした実績におごることなく、現場で指揮を取る姿には尊敬しかありません。"おやきありき"ではなく、"地元農業と農産物ありき"の経営スタイル。それこそ、小池さんが次世代に伝えていきたいことなのです。


おかあさんの味処 たんぽぽ
代表 小池峰子
創業 平成4年
長野市篠ノ井山布施8831-19 ℡026-229-2948

おやきをはじめ総菜、漬物、駄菓子など地元野菜をふんだんに使った加工品の製造販売と、野菜の直売を行う有限会社。市内スーパーや他の直売所への卸をメインに、冠婚葬祭用の仕出し弁当も請け負う。地元に根付いた母さんの台所。

小池さん(左から4人目)とスタッフのみなさん

価格 140円(税込)
生地 中力粉

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