信州金熊温泉明日香荘-大町市八坂

野沢菜

幅8.0㎝x厚さ6.2㎝ 206g 野沢菜塩漬け (味噌、砂糖、植物油、粉末出汁)

なす

幅8.5㎝x厚さ6.0㎝ 210g 長ナス(味噌、砂糖、植物油、粉末出汁)

おから

幅7.8㎝x厚さ5.8㎝ 223g おから、青菜、人参、椎茸(醤油、砂糖、植物油、粉末出汁)

 大町市の東部に位置する旧八坂村。昔から「八坂村といえば、明日香荘の灰焼きおやき」と言われてきた人気のおやきは、八坂の温泉旅館の名物でした。
 金熊温泉という名は、数ある金太郎伝説の出生地のひとつであることから命名されたとか。金太郎は温泉を産湯に使い、眼下に流れる金熊川で熊と遊んだそうです。ここが金太郎ゆかりの地だとは知りませんでした。明日香荘は1971年の創業。今は指定管理者制度に基づき、大町市に本社がある株式会社ハーヴェスタ・クリエーションズが明日香荘を管理運営していて、2012年の全館リニューアルオープンに合わせて灰焼きおやき専用の製造部屋を作り、"明日香荘のおやき"の伝統を守り続けています。
 「シンデレラガールはみんな元気いっぱいなんですよ」。
 灰焼きおやきの製造棟に案内してくれたハーヴェスタ・クリエーションズの担当者がこう話し始めました。思いがけない言葉に驚いて「シンデレラガール?」と聞き直すと、「シンデレラって灰のお姫様じゃないですか。親しみを込めて、おやきのスタッフさんのことをシンデレラガールって言ってるんです」。なんだか可愛いネーミングで、嬉しくなります。
 鉄筋コンクリート造の"おやき部屋"は2つのエリアに区切られていました。1つは包みと焼きの部屋、もう1つは野菜の下処理と具の調理、生地練りなどの加工場です。
 2m四方の灰焼き場が設えてある包みと焼きの部屋には2人のスタッフが常駐。1時間ごとに包みと焼きを交代しながら作るそうです。
 灰焼きおやきの包みは見るからに豪快です。前もって150グラムに計量した生地を手のひらでつぶして広げ、1センチ角に刻んだなすを片手でガシッとつかんで押し込みます。具の中心に味噌・油・砂糖を振りかけ、なすをもう一つかみ載せて、生地を両手で包んで押し上げていき、最後に生地の余分な部分の"ヘソ"をちぎります。
 ホットプレートで両面を軽く焼き固めると、焼き係の出番です。灰焼き場の中におやきを埋めて、順番にコロコロと転がしながら40分。焼いている途中、生地が薄い部分が割れてブクブクと灰が噴き出してくるのは、まるで小さな火山噴火を見ているようで、おもしろいのです。
 けれど、割れ目が大きければ商品になりませんから、作り手にはとても難しいところ。この道8年のベテランスタッフによると、具が真ん中にしかも均等に入っていないと、割れがひどくなってしまうのだとか。「初めの頃は、コツをつかむために何回も何回も自分で作って、具が真ん中に入っているかを確かめました」とはいえ、今では手慣れたもの。包み終えたおやきを手にのせてコロコロと回すだけで、均等に具が入っているかがわかるそうです。
 焼き上がりのタイミングを聞いてみると、「手に取ってみて全体が硬くてパンパンになっていれば出来上がりです。どこか1か所でも軟らかいところがあるとまだ焼き上がってないんです」。ブラシとタオルで、おやきについた灰を丹念に落として完成です。
 ここで驚いたのは、灰焼き場の熱源が電気だということ。ガスを熱源にしているところが多いので、思わず「電気代とっても高いんじゃないですか?」。やはりとても高いそうで、それでおやき1個240円は安過ぎますよね。
 加工場の部屋の片隅に、年季が入った大型の回転釜を見つけました。明日香荘といえば「おからのおやき」ですが、そのおからを煮るためだけの釜だそうです。「もう古いから壊れたり部品が欠けたりすると大変なんですよ」。この釜で人気のおからを作っているのか、としみじみ見入ってしまいました。
 明日香荘で買えるおやきは常時1種類のみ。季節によって具が変わり、3月頃から「切干大根」か「野沢菜」、5月頃から「茄子」、11月頃からが人気の「おから」です。温泉らしく毎月26日(風呂の日)に限定100個の変わりおやきが販売され、「ふき味噌」「淡竹」「寒干し大根」「小豆」といった旬の地元野菜や山菜が登場します。

 コロナ前は宴会帰りにおやきをお土産にする人が後を絶たず、観光客需要もあって、売り切れてしまう日が多かったそうですが、感染拡大の時期は休館を余儀なくされるなど、厳しい状況が続く明日香荘。「でも、冷凍でもいいから灰焼きおやきが欲しいという人がたくさんいらっしゃるんです。しかも地元の人がとっても多くて。みなさん、ほんとに灰焼きが好きなんですね」と明日香荘の担当者。
 八坂のお年寄りが元気なのは、灰焼きおやきを食べてるからだとか。確かに噛めば噛むほど味が出てくる灰焼きおやき。しっかりかじって噛んで味わえば、あごも歯も丈夫になるし、脳も刺激を受けるはず。若返りには灰焼きおやきだと納得しました。


信州金熊温泉明日香荘
管理者 ㈱ハーヴェスタ・クリエーションズ
創業 昭和46(1971)年
大町市八坂1160 ℡0261-26-2301

「八坂村といえば明日香荘の灰焼きおやき」と言われるほどの人気おやき。以前は囲炉裏で作っていたが、2012年のリニューアルオープンに伴って製造場所を新設。フロント脇で販売している。
1シーズン1種類を販売。風呂の日(26日)には変わりおやきが限定販売される。

価格 240円(税込)
生地 中力粉

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