氷河へのアプローチ

 アラスカにはたくさんの氷河がある。直接海に流れ込んでいるものもあれば、山脈の中にあり、氷河の突端から川の源流になっているものもある。ものによっては、多くの人が住んでいる街からわずか数キロのところにある氷河もある。イメージとしては、信州の松本を流れる梓川を遡上した先のあたり(地名でいったら新島々)に、槍ヶ岳や涸沢に端を発する厚さ数十メートルの巨大な氷があるようなものだ。
 これは、アラスカを移動中に飛行機から撮ったフェアウェザー山脈と氷河である。こうして上から見ると、山脈の中を流れる "氷" の "河" であることがわかる。
 氷河の撮影にあたっては、地図をよく読み込んだ後、実際の地形を見て、自分の行けそうな氷河の突端まで歩いて取り付く。アラスカで発行されている地図は30~40年以上改訂されていない領域も多く、実際に行くと地図上にある川がなかったり、逆に濁流になっていたりする。濁流を避けて森を抜けたり、川を渡ったり、時に流されたりしながらアプローチするのだが、いつも汗だく&泥だらけで歩くことになる。正直なところ、何日もシャワーを浴びることができず、ドロドロになりながら撮影を終えて街に戻った時には、毎度のように「もう行きたくないな」と思ってしまう。
 しかし、アプローチしている時は、森の奥に生き物の気配を感じ、「数万年前には今歩いているエリアすべてが氷床に覆われていたのか」などと遥かな時の流れに想いを馳せる。数万年前に凍った氷と、その中に閉じ込められた数万年前の大気に触れに行くのだ。アプローチハイとでも言おうか。ドキドキワクワクしつつ、息を切らしながら、氷河の今の姿を撮影せんと先を急ぐのである。

山脈の中にある氷河の突端。ここがこの川の源流だ。ちなみに、氷河由来の川の水は今まで触れたどの水より冷たく、わずかでも濡れてしまうとあっという間に体が冷えてしまう
ARCHIVE